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浅田次郎 珍妃の井戸 [日記(2008)]


珍妃の井戸 (講談社文庫)

珍妃の井戸 (講談社文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 文庫


 1902年、載沢親王の舞踏会にミセス・チャンとソーズルベリー提督が登場し物語の幕が開きます。張婦人は、大英帝国が義和団事件の調査『義和団事件における連合軍将兵の非人道的行為に関する調査』に派遣したソーズルベリーの耳にそっと吹き込みます『(義和団事件の混乱の中で)ひとりの美しい妃が紫禁城内で命を落とされましたの』。殺された美しい妃とは、西太后によって井戸に投げ込まれたと云われる光緒帝の寵妃・珍妃のことです。光緒帝は、1898年の康有為と共に『戊戌の変法』を企て、百日天下の後、保守派西太后によって中南海の小島に幽閉された改革派の皇帝です。
 この珍妃暗殺の謎に英独露日の4人の貴族が立ち向かいます。英独露日はいずれも立憲君主国です。皇帝の妃が暗殺されるという君主制の根幹を揺るがす事件に、同じ君主制国家の4人の貴族が国益を離れて立ち向かうわけです。表向きは君主制を守るとういう共通の立場を取りながら、4人のそれぞれの国益を背負った鞘当ては、ボケとツッコミの上等な漫才を見るようです。
4人の探偵とは英:ソーズルベリー提督、義和団事件における連合軍将兵の非人道的行為に関する調査団長
独:シュミット大佐、駐在武官
露:ペトロビッチ総裁、露清銀行総裁
日:松平忠永子爵、東京帝国大学文科教授

何故、英独露日の4カ国なのか。作者が設定した君主国であるという以上に、この4カ国はシナに大きな利権をを持ち、シナを蚕食している国であるためでしょう。作者は、加害者が探偵となるというアイロニーを込めて4人の探偵を創造したのでしょうね。

 4人の探偵が事情聴取したのは、
第2章 ニューヨーク・タイムズ駐在員 T・E・バートン
第3章 光緒帝に仕えた宦官 蘭琴
第4章 軍閥にして国民政府総統 袁世凱
第5章 光緒帝の側室で珍妃の腹違いの姉瑾妃
第6章 瑾妃に仕えた宦官 劉蓮
第7章 光緒帝の従兄弟の息子 溥儁
第8章 光緒帝その人
の7人。

バートンは滞華30年の経験から西太后犯人説を否定し、蘭琴に聞けとアドバイスします。蘭琴は珍妃に横恋慕していた梟雄・袁世凱が怪しいと云います。袁世凱はなんと殺害の現場に立ち会っていた、犯人は実の姉瑾妃だと云います、動機は嫉妬だと。瑾妃を聴取すると、殺害を命じたのは光緒帝の正妻・隆裕皇后だと云います。瑾妃付の太監・劉蓮の案内で殺害現場の検証を行いますが、ここでまた劉蓮が別に犯人がいることを告白します。光緒帝の従兄弟の息子で義和団に属する溥儁だというのです。溥儁は珍妃は自ら井戸に身を投げた、自殺だというのです。バートンを除いて5人はいずれも現場に居合わせた人々であながら、何故こうも証言が食い違うのか。彼らは真実を隠し、自分に不利益をもたらす人物を犯人に仕立てようとしているのではないか。真犯人を求めて4人は幽閉されている光緒帝を密かに訪ねます。光緒帝の口から語られる珍妃の死の真実とは?
 うまいです →★★★★
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珍妃
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