浅田次郎 お腹召しませ [日記(2008)]
これは、浅田次郎風小噺です。噺は武家物ですが、落語の様に冒頭に枕が付きます。本書の題名となっている『お腹召しませ』も、没落した実家で祖父と暮らす中学時代の思い出が枕となって、婿の不始末から切腹の運命を背負い込んだ主人公の、これはもう笑うしかない悲喜劇の幕が開きます。女房、娘、上役、同僚から『お腹召しませ』と云われる主人公に、翻って我が身を重ねると、相当の毒を含んだ物語です。
第二話『大手三之御門御与力様失踪事件之顛末』は、浅田次郎の職人芸が光ります。話しとしてはよくあるものですが(連城 三紀彦にあったような)、何処にいても追いかけられる携帯電話や電子メールを枕に、『天狗の神隠し』を使った武家の人情噺は浅田次郎ならではの一遍です。
あいかわらずうまいです →★★★★
コメント 0