SSブログ

A.J.クィネル ブラック・ホーン [日記(2009)]


ブラック・ホーン (集英社文庫)

ブラック・ホーン (集英社文庫)

  • 作者: A.J. クィネル
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2001/04
  • メディア: 文庫


 クリーシィ・シリーズ第4話です。
●第1話:燃える男
元傭兵クリーシィが登場しイタリヤ・マフィアと抗争を演じます。クリーシィはマルタ島でナディアと結婚します。
●第2話:パーフェクト・キル
パレスチナのテロの巻き添えで殺されたナディアの復讐物語です。クリーシィの片腕としてマイケルを養子にし、彼を一流の傭兵として育て復讐を完遂します。
●第3話:ブルーリンブ(未読)
●第4話:ブラック・ホーン(本書)
第2話でグレインジャーのボディーガード、傭兵仲間のマキシーが登場し、重要な役割を演じます。『パーフェクト・キル』の登場人物である高級売春宿の経営者ブロンディ、マキシーの妻ニコル、武器商人コークスクリュー(ツー)も登場しシリーズをつないでいます。

 『パーフェクト・キル』の終わりの方で、クリーシィは『必殺仕事人?』を開業すると宣言しています。本書は、グレインジャーが持ち込んだ『仕事』で、舞台を(中国返還前の)香港とジンバブエ(ローデシア)に移し、香港マフィア三合会と壮絶な死闘を演じます。『血の絆』の舞台はタンザニアでしたから、再びクリーシィがアフリカに登場します。
 2つの物語が同時進行します。ひとつは、グレインジャー経由でクリーシィに持ち込まれた話で、ジンバブエで殺された大富豪の娘の犯人探し。もうひとつは、香港の漢方薬研究医の一家の惨殺事件です。香港の殺人事件は、唯一生き残った医師の娘ルーシと香港警察の三合会対策刑事チャップマンが犯人探しに動き出します。

【犀角】
 一見何の脈絡もない2つの事件をつなぐ鍵が、犀角(ブラック・ホーン)です。犀の角は、非常に高価な漢方薬として取り引きされ、この取引を一手に握るのが香港の三合会最大の派閥14Kです。
 犀角は回春剤、催淫剤として高価に取り引きされ、犀の減少とともにますます値段が上がっているという代物です。犀そのものが保護動物ですから犀角の取引は当然禁止の対象であり、三合会が活躍するわけです。

【登場人物】
《クリーシィ分隊》
 『ブラック・ホーン』では(ブルーリングは読んでいませんが)クリーシィの傭兵仲間が集団で登場します。
・グィドー・アレッリオ(イタリア)
クリーシィと25年傭兵として各地を転戦。引退してナポリでペンションを経営。『燃える男』に登場し、クリーシィを『再生』させる。ナディアの姉と結婚していたため、クリーシィはナディアと知り合い結婚することとなった。妻同士が姉妹の義兄弟。
・マキシー・マグドナルド(ローデシア・ジンバブエ)
元ローデシア軍兵士。『パーフェクト・キル』で上院議員グレインジャーの警護を担当。売春婦ニコルと結婚し、ボディーガードを辞めレストランを始める。本書では、その経歴が買われクリーシィとジンバブエの戦闘に参加。
・フランク・ミラー(オーストラリア)
『パーフェクト・キル』でグレインジャーのボディーガード。元傭兵。
・ルネ・カラール(ベルギー)
『パーフェクト・キル』でグレインジャーの警護を担当。元傭兵。
・イェンス・イェンセン(デンマーク)元警官、コペンハーゲンで私立探偵事務所を営む。今回の作戦の連絡調整役。コンピュータに堪能でフェリーが好きでビールに目がない。
・マルク・ベノワ、(フランス)通称《フクロウ》。マルセイユの元ギャング。イェンスのパートナー。クラシックが好きで何時もウォークマンを聴いている。
・トム・ソーヤー(アメリカ)元海兵隊の黒人。
・ドゥ・フアン(ヴェトナム)ヴェトナム人と広東人の混血、諜報活動を担当。
・エリック・ラパルト(フランス)銃火器の名手。
・トニー・コープ(イギルス)元イギリス海軍将校。
・デイモン・ブロード(イギリス)元イギリス海軍。トニー・コープとともに、高速クルーザーでクリーシィを香港から脱出させる後方支援にあたる。

 総勢12名が三合会14Kに挑みます。1分隊です。出てくる武器も軍隊並です。2インチ迫撃砲、RPG7(ソ連製の対戦者ロケット砲)、ウズィ・サブマシンガン、FNP9090軽量サブマシンガン、コルト1911、ベレッタ、手榴弾、照明弾等々。

《端役だが魅力的な二人》
・コリン・チャップマン(イギリス)
香港警察三合会対策部長。八千語の漢字の読み書きが出来、福建省訛りの広東語が使える中国人より中国文化を理解している35歳のシャイな警官。なかなか魅力的なキャラクターなのですが、物語の前半で三合会に殺されてしまうのは残念です。クリーシィの香港襲撃が予想されるのですから、何も殺すことはなかったのでは、と思います。
・コークスクリュー・ツー(ベルギー)
『コルク栓抜き』です。非合法武器商人の父親から仕事を引き継いだ2代目。クリーシィの兵站を担当しますが、どうやら三合会にも武器を撃っているしたたか者。『ブラック・ホーン』から登場するシリーズお馴染みの人物。。

 『ブラック・ホーン』も面白いのですが少し大味です。設定としては面白いキャラクターが多いのですが、造形に突っ込みが足りず中途半端に終わっています。コリン・チャップマンがその典型ですが、ルーシーや車椅子の大富豪グローリアもそうです。いいキャラなのですが。これは登場人物が多すぎることが原因かもしれません。何しろ、ジンバブエと香港で2回も見せ場を作ってくれたのですから、クィネルの大サービスにあまり文句を云っては駄目でしょうね。ひとつだけ、(読んだ人にしか通用しませんが)クリーシィとルーシーの関係は読者サービスなんですか、作者の願望なんですか?


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0