読書 リチャード・マシスン アイ・アム・レジェンド(地球最後の男)(1954米) [日記(2010)]
ウィル・スミスが主演した映画『アイ・アム・レジェンド』の原作です。50年以上も前、1954年の刊行です。邦訳のタイトルは『吸血鬼(地球最期の男)』。吸血鬼ものです。吸血鬼ですから太陽光と十字架とニンニクが嫌いで、心臓に杭を打ち込まないと死にません。ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』以来のお馴染みの設定です。
正統・吸血鬼?は吸血鬼に血を吸われた人間が吸血鬼となって増殖しますが、こちらはウィルス(病原体)に感染することによって人間が吸血鬼となります。ウィルスの蔓延で世界中の人間が吸血鬼となり、抗体を持った主人公ひとりが人間として取り残され『地球最後の男』となります。
周りはすべて吸血鬼、主人公を襲う吸血鬼の群れから身を守るため自宅を要塞化してひとり籠城します。吸血鬼は日光を恐れますから、昼間の活動は自由、無人となった街で食料やガソリンを調達し、昼間は眠りにつく吸血鬼を殺し、ウィルスの研究に明け暮れます。
小説としてのプロットは2つ。男以外総ての生き物がウィルスに汚染され、無人の廃墟と化した街で、男は犬出会い女性と出会います。太陽の下で活動する生物は、吸血鬼(吸血犬)ではないわけです。映画『アイ・アム・レジェンド』でもウィル・スミスと愛犬サムの触れあいはひとつの見どころですが、小説では、思いがけず犬や人間(それも女性)に出会った歓びととまどい(ウィルスに汚染されていない保証はない)が描かれます。孤独だが安住の世界が、ある意味乱されることとなります。このあたりが結末を控えた小説の山場でしょう。
そして結末は『新人類』の登場です。生き延びた人間は、主人公が出会った女性だけでは無かったのです。彼女は『新人類』のひとりだったというわけです。
“I Am Legend ”というタイトルです。映画も本も同じタイトルを使っていますが、意味が全く異なります。映画では、主人公がウィルの抗体を発見し、生き残った『人類』のLegend(伝説)となりますが、小説では、『地球最後の男』として『新人類』の伝説となります。I Am Legendというアイロニーです。
リチャード・マシスンと言えば『縮みゆく人間』が有名です。Wikipedia見ると映画『ある日どこかで』の原作も書いているんですね。
おそらく絶版となっていた『地球最後の男』が映画のおかげで再版となったことは喜ばしいことです。
2010-04-11 08:44
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