映画 ギャング・オブ・ニューヨーク(2002米) [日記(2010)]
原題:Gangs of New York。
アメリカ映画でアイリッシュの刑事というと向こう見ずでちょっと変わった(映画になりやすい)存在として描かれることが多い様です。NYの警察官や消防士にはアイルランド系が多いと聞きますが、移民によって成り立ち人種の坩堝と言われるアメリカを考えるにはちょうどいい映画です。
1940年代にアイルランドから大量の移民がアメリカにおしよせています。移民として後発のアイルランド人は安い賃金で働くため既存の労働者を圧迫し、集団でスラム(ファイブ・ポインツ地区)化するため、元からアメリカに住む人々と摩擦を起こす存在だったようです。宗教もカトリックです。映画は、この対立を『デッド・ラビッツ』(アイルランド系)と『ネイティブ・アメリカンズ』というふたつの集団の対立として描いています。時代は南北戦争の頃ですから、徴兵制の問題(ニューヨーク徴兵暴動)が絡み、アイルランド移民の問題をますます複雑にしています。
調べると、『デッド・ラビッツ』も『ネイティブ・アメリカンズ』も実在の集団で、なんとディカプリオの敵役《ビル・ザ・ブッチャー》(ダニエル・デイ=ルイス)も《ウィリアム・ボス・トゥイード》も実在の人物です。《ビル・ザ・ブッチャー》は死後に芝居でも取り上げられる庶民の英雄のようです。
アメリカのギャング(犯罪組織)というとイタリア・マフィアが有名ですが、これは移民の主流がアイルランド人からイタリア人に移ったためです。NYのギャングは、古くはオランダ系、アイルランド系、ユダヤ系、黒人系(移民じゃないですが)と移民の人種によって組織されてきました。
こちらによると
新移民は、アメリカに渡ってきたら貧困層の街=一般名詞として「ゲットーghetto」、にまずは住む。貧困と無教養を理由として、一部の新移民は犯罪組織を作る。そして、その他の大多数の移民たちは一所懸命に働き、お金が出来たら「ゲットー」を出て行く。空いた「ゲットー」に、次の新移民が入ってくる、というパターンです。従いまして、時代を通じて、新移民に民族的な変化があった場合には、犯罪組織も民族的な変化がある。
とのことです。
こういう背景をあまり知らずに映画を見たものですから、何処が面白のかさっぱり。歴史的事件や人物のなかでストーリーが進行するわけですから、アメリカ人ならナルホドと思うのでしょう。
さて映画の方です。冒頭で『デッド・ラビッツ』と『ネイティブ・アメリカンズ』の抗争が描かれ、『ネイティブ・アメリカンズ』のリーダー《ビル・ザ・ブッチャー》は『デッド・ラビッツ』のリーダーの神父を殺害します。映画は、神父の息子アムステルダム(レオナルド・ディカプリオ)の復讐の物語として描かれますが、題名どおり移民と南北戦争の中でニューヨーク・ギャングがどの様に勃興していったかという物語でしょう。
題名からアクション映画を期待したのですが、(アクションもあるにはあるのですが)相当違っていました。歴史ドラマでしょうね。ディカプリオとキャメロン・ディアスのラブストーリーはおまけ、ディカプリオも狂言回し。ヒーローはダニエル・デイ=ルイスでしょう、いや時代が主役です。何よりも、19世紀中葉のNYにタイムスリップできます。こちらがお薦めです。
監督のマーティン・スコセッシとディカプリオですが、《シャッターアイランド》のコンビですね。
当時のファオブ・ポインツ
監督:マーティン・スコセッシ
出演:
レオナルド・ディカプリオ
ダニエル・デイ=ルイス
キャメロン・ディアス
コメント 0