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映画 列車に乗った男(2002仏) [日記(2010)]

列車に乗った男 [DVD] 原題、L' HOMME DU TRAIN。パトリス・ルコントの描く世界は、人間の内部世界が排他的に自己完結する世界だと思います。仕立屋の恋で仕立屋は無償の愛に殉じ、髪結いの亭主では愛を永遠に閉じこめるために濁流に身を投げます。排他的、自己完結、あるいは独善、ひとりよがり、どうとでも言えますが、人間の内部世界は他人の斟酌を拒否する魂の王国なのです。
 パトリス・ルコントが男同士の世界で魂の王国を描くとどうなるのか?、『列車に乗った男』はそんな映画です。

 男がふたり。ひとりは銀行強盗を企む中年ギャング(ジョニー・アリディ)。もうひとりは、30年にわたる国語教師を退職した初老の男(ジャン・ロシュフォール)。この全く異質なふたりがふとしたことで出会い、ギャングは誘われるままに元教師の家に滞在します。

 元国語教師は、地元の名家の出身で荒れはてた屋敷にひとりで住んでいます。ジェリコーの絵が飾ってあるのですから名家でしょう。おそらく母親の面倒を見ている間に機会を逸し、この年まで独身。たくさんの本に囲まれ、中流家庭の娘がしつけられることは刺繍以外何でもできる、とピアノを弾いて見せます。
 洗面所に歯ブラシもクシもすべてが二組揃っているわけを、ギャングは元教師に尋ねます。

 人は二つのタイプがある、歯ブラシが無くなったらすぐ買いに走る行動型と予備を用意しておく計画型。
 あんたは、何でも二組用意しているのか?
 いや、三組だ。


 ギャングについてはほとんど何も描かれません。元教師の饒舌の反対側にいるのがギャングだということです。

 正反対の道を歩んできたふたりの人生が交差するとき、何が起きるのか?

 冒頭で、列車からひとりの男が降り立ちます。降りたのはギャング。ラストで、列車にひとりの男が乗り込みます。乗ったの元国語教師。

 『列車に乗った男』、これはお伽噺です。パトリス・ルコントの描く魂の王国の物語です。
 中年男性には特にお薦めです。

 元国語教師を演じるのは、『髪結いの亭主』でアラブ音楽に合わせて奇妙なダンスを踊って見せたジャン・ロシュフォール。今回も快調の演技です。寡黙なギャングを演じるのは往年の(今も活躍中らしいですが)ロック歌手、シルヴィー・バルタンの元旦那ジョニー・アリディ。久々にジョニー・アリディにお目にかかりました。

監督: パトリス・ルコント
出演: ジャン・ロシュフォール, ジョニー・アリディ


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