SSブログ

映画 第9地区(2009米) [日記(2010)]

第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

 宇宙人との接触というと、未知との遭遇コンタクトなどの地球人を超えた知的生命体との遭遇、宇宙戦争に代表される怪物による地球侵略です。『第9地区』のエイリアンは、姿こそ伝統的な“エビ”ですが、なんと地球にやってきた難民なのです。この設定には度肝を抜かれます。

 1982年、南ア共和国のヨハネスブルグ上空に巨大宇宙船が飛来します。詳しい説明はありませんが、宇宙船は飛び立つことも出来ず、エイリアンは栄養失調状態で遭難状態。この来訪者を救うために、宇宙船直下にエイリアンの難民キャンプが出来ます。それから20年、エイリアンは180万人に膨れあがってキャンプはスラム化し、キャンプを抜け出したエイリアンが街で犯罪を引き起こし社会問題となっています。この難民キャンプが、タイトルの“第9地区”なわけです。

 この設定は凄いと思います。エイリアンを難民として捉えた視点はかつてありませんね。冒頭で、宇宙船が静止したのは、マンハッタンでもなくワシントンでもなくシカゴでもなくヨハネスブルグ上空であるというナレーションが入ります。南ア共和国のアパルトヘイトが撤廃されたのは1991年です。舞台をヨハネスブルグに選んだことは、南ア共和国出身のニール・ブロンカンプの強烈な皮肉でしょう。
 このエイリアン“エビ”の地球滞在も20年になりますから、彼らは英語を話して地球人とコミュニケーションを取り、大好物がキャットフードの“猫缶”だというから笑います。

PDVD_002.jpg

 社会問題化したエイリアン難民をヨハネスブルグから200km離れた“第10地区”へ移す計画が持ち上がり、ヴィカスを責任者に進められます。このヴィカスが事故によって“エビ”に変身を始めることから、映画は佳境に入ることとなります。右手から“エビ”に変身し始めますが、ヴィカスは地球人でも“エビ”でもない第3の存在となることがミソでしょう。“エビ”は強力な武器を持っているのですが、この武器はDNDと反応して作動するため、地球人は使えません。半“エビ”となったヴィカスは扱えることがわかり、政府は色めきだちます。

 ヴィカスは入院した病院から逃げ出し第9地区に隠れ、エイリアンであるクリストファーに匿われます。ヴィカスを追うのが地球人で、ヴィカスを匿うのがエイリアン。ヴィカスの変身を治すために、ふたりは政府機関に忍び込みますが、ヴェガスとエイリアンが地球人に向かって機関銃をぶっ放し、ヴェガスはクリストファーを逃がすためにモビルスーツで戦います。構図が全く逆転しています。
 この辺りはハリウッドのアクション映画です。クリストファーは無事宇宙船に乗って飛び去り、ヴェガスは全身“エビ”となって第9地区で暮らすラストシーンで幕。
PDVD_006.jpg PDVD_003.jpg

  エッこれだけ? 続編があるのかないのか分かりませんが、幕開けがギョッとする幕開けだっただけにちょっと残念。『第9地区』は寓話です。あるいは、カフカ『変身』の現代版なのですか?
 ナイジェリア人のギャング団が登場します。エイリアンに“猫缶”を販売して武器を買いあさったり、ナイジェリア人というのは何かアパルトヘイトと関係があるのでしょうか?

監督・脚本:ニール・ブロンカンプ
出演:シャールト・コプリー


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0