映画と原作 (1) [日記(2010)]
・薔薇の名前(1986年仏伊西独)・・・ウンベル・トエーコ 薔薇の名前
⇒映画も原作も重厚の一語につきます。フランシスコ会修道士バスガヴィルのウィリアム(映画ではショーン・コネリー)が中世の教会で起こる殺人事件を解き明かすミステリーのかたちをとっています。殺人の背後にはアリストテレスの失われた稀覯本の謎があり、『異端と正当』、『転向』など思想上の問題をはらんだ大長編です。
映画は、F・マーリー・エイブラハム、ロン・パールマンまで登場し、文句なく面白いです。監督はジャン=ジャック・アノー。
⇒映画はカルト的な人気に支えられ有名ですが、原作とは別物です。フィリップ・K・ディックの原作『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』は1968年の初版ですから古色蒼然、最近のSFを読むような面白さはありません。
原作は、イジドア、ウィルバー・マーサー、バスター・フレンドリーなどメタファーに満ちた人物や、不思議な機械が登場し、隠喩に満ち満ちた物語です。これこそファンタジーかもしれません。
ロード・オブ・ザ・リング三部作は、DVDを圧縮掛けてスマートフォンに入れ、何時起こるかもしれない入院に備えています・・・(笑。お盆と正月には、3枚連続で鑑賞するのが年中行事です・・・(笑。
と言いながら、原作は『二つの塔(上)』で止まっています。一応古本で揃えたので、病院のベッドで読むつもりです・・・(笑。
続編は面白くない場合が多いのですが、《旅の仲間》《二つの塔》《王の帰還》と3作とも緊張をはらんだ大スペクタクル、大叙事詩。 映画の方は、篠田正浩隠退記念で、賛否両論あるようですが個人的は面白かったです。原作(正確には原作ではありません)は、世界史の中でゾルゲが位置づけられ、ヨーロッパ、日本の政情分析には驚かされます。赤軍スパイ・ゾルゲの情報をまともに評価できないスターリンの性格や、当時の諜報の様子が分かって興味が尽きません。
映画はゾルゲ、スメドレー、尾崎秀実、宮城与徳などが実際に画面で躍動するわけですから、感慨ひとしおです。
原作は歴史的資料として価値はあるでしょうが、読んで面白いものではありません。映画の方は中国政府の全面的バックアップで紫禁城でロケを行っているため、皇帝の戴冠式?や閲兵、溥儀の日常生活など映像は視応えがあります。甘粕正彦の坂本龍一はミスキャストですが、溥儀の英国人家庭教師ジョンストを演じたピーター・オトゥールは古き良きイングランドですね。流転の皇帝溥儀を演じたジョン・ローンはどうなんでしょう。
墨家から派遣された軍事顧問・革離が、趙の軍勢から地方豪族の城郭をたったひとりで守り抜くという痛快な物語です。酒見賢一の原作は短いですから是非読んで見て下さい。どちらが先でもいいでしょう。10万の軍勢を5000人で守り抜くのですが、映像より想像する方がスケール感が出たりします。
宣伝につられて映画も本も・・・どちらも×。守護霊=ダイモンや鎧クマとか仕掛けは揃っているのですが、どうもついて行けませんでした。
映画も原作も、記憶喪失のボーンの正体が主題となるのですが、原作はボーン=テロリスト・カルロイスに比重がかかっていますが、映画はボーンvs.トレッドストーン。息もつかせぬテンポの速いストーリー展開で、スパイ・スリラー+アクション映画として出色です。
ラドラムの『暗殺者』は名作で、この手のスパイものでは古典だと思うのですが、残念ながら絶版です。
DVDは『鷲は舞いおりた』書籍は『鷲は舞い降りた』です。チャーチル誘拐計画をドイツ軍の側から描いています。ストーリーもさることながら、主人公のシュタイナ大佐とIRAの闘士デブリンの人物造形でしょう。映画も、このふたりをマイケル・ケインとドナルド・サザーランドが好演しています。古いですが、冒険小説、冒険映画がお好みなら絶対のお薦めです。原作は、冒険小説に留まらず、第二次世界大戦を舞台としたスパイ小説としては『針の眼』と並ぶ力作です。こちらも映画化されてドナルド・サザーランド主演です、何時か見てみたいものです。
サリンジャーとおぼしき小説家と高校生の交流を描いたヒューマンドラマです。映画は小説を忠実にたどったもので、ほぼ小説通りと云っていいと思います。小説の方が面白い映画、映画の方が面白い小説、映画と小説とは全くの別物、と三つあると思うのですが。小説=映画はめずらしいかも知れません。まぁショーン・コネリーが出ているだけ映画に分があるのではないでしょうか。
原作はハインリヒ・ハラーの記録文学。映画はジャン=ジャック・アノーとブラッド・ピット。冒険譚として読む、見るとどちらも面白いです。
ブラビで映画化されてこの有名な記録文学が再版されました。映画と原作の幸福な関係です。
映画を見た後、『ネタバレ』状態で原作を読みましたがさすがはマイクル・コナリーです、読ませます。
面白さは、クコナリーの原作の力でしょう。本のカバーとDVDのジャケットがどちらもクリント・イーストウッドというのは、コナリー・ファンなら怒りますねぇ。
コナリーのボッシュ・シリーズは面白いですが何故か映画化されていません。最新作『リンカーン弁護士』が映画化されるという噂ですが、その後どうなったんでしょう。
↑ 3作がbookカバー=映画なんですが・・・。
映画→原作の順です。映画はケイト・ウィンスレットの演技が素晴らしいです。原作は主人公マイケルの軟弱さが鼻に付き退屈しました。ある意味謎解きの要素が大きいですから、ハンナ=ナチを知っていると楽しめないのかもしれません。
犬の鼻をもった男の、暗喩と猟奇に満ちた奇想天外な物語です。映画も素晴らしいですが、原作は映画以上かもしれません。
少女の香りを香水に閉じこめるエロティシズムと、香水によって引き起こされる大乱交シーンは、エロスと政治、エロスと宗教を暗示しているようないないような・・・。個人的には絶賛の映画であり原作です。映画は無冠ですが、何故なんでしょう。
『聖杯伝説』ですね。話題になった頃はあまり面白いとは思わなかったのですが、史的イエスという興味で見て読むと、面白さが断然違ってきます。この 『聖杯伝説』の鍵がダ・ヴィンチの『最後の晩餐』に描き込まれ、『マグダラのマリア』によってイエスの血が現代まで脈々と受け継がれているというストーリーは、なかなか刺激的です。
映画はトム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケランまで揃えて頑張ったんですが・・・。小説の解説としてはgood。
以下、偏見です。
・原作が面白いから、映画も面白いとは限らない。→あたりまえ
・映画が面白いから、原作も面白いということはあり得る。→但し、ミステリーは面白さが半減する。
・原作に触発され、原作のある部分を拡大(解釈)した映画は面白い可能性が高い。→この場合、原作≠映画となる。『ドラキュラ』は間違いなくブラム・ストーカーの原作が面白い。F・コッポラのドラキュラは別物だと思う。
・原作人気の映画は 『概ね』 面白くない。 →但し、映像化効果は侮れない、例えばジュラシック・パーク。
・映画は俳優によって変わる。→あたりまえ
ベティー・ブルーは原作を読んでませんが、ベアトリス・ダル無くして映画としては成り立たない?・ ⇒荻野アンナのベティー・ブルーの世紀末ブルースご参照。
結論です。
結論です。
映画は映画、原作は原作!
『日の名残り』『Uボート』『ベティー・ブルー』『イギリス人の患者』『ショコラ』などなど、ため込んだ原作本どうしようか悩みます。『ミスティックリバー』なんか見つけたらまた買ってしまうんでしょうね。
【追記】
映画:ことの終わり(1999英)
原作:グレア・ムグリーン 情事の終わり
映画:薬指の標本
原作:小川洋子 薬指の標本
フリーク:映画と原作『薬指の標本』
タグ:読書
2010-11-27 09:22
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ブラックダリアは、本当に映画は面白くなかったですねえ。
同じ、ジェイムズ・エルロイ原作
「L.A.コンフィデンシャル」は
原作も映画も面白かったです。
私の中で、原作も映画も素晴らしいと
言えるのは断トツ「羊たちの沈黙」です。
後は、やっぱり「電気羊は〜」ですねえ。(*^_^*)
「香水」「日の名残り」「イギリス人の患者」も
原作、映画ともに好きです。
by rudiesgirl (2013-01-08 12:33)
原作はいろいろ持っているのですが、読書の方ははかどりません。
この稿では触れていませんが、『薬指の標本』が原作も映画も秀逸でした。小川洋子原作のフランス映画という変わり種です。別稿もうけておりますので、よかったらどうぞ。
by べっちゃん (2013-01-08 20:35)