読書 デイヴィッド・ベニオフ 25時 [日記(2010)]
2010年の週刊文春ミステリ、このミスベスト10にも取り上げられた『卵をめぐる祖父の戦争』のデイヴィッド・ベニオフの出世作で、スパイク・リーによって映画化されています。
麻薬密売で懲役7年の判決を受けた若者モンティの、明日は収監されるという24時間を1章1時間の構成で描いています。過去に遡ることはあっても、この小説にドラマはありません。モンティと24時間を描くことで、NYに暮らすひとりの若者の姿が浮かび上げってくるという仕掛けになっています。普通の24時間ではなく人生最後の24時間というほどでもなく、人生を振り返るに十分な収監前の24時間という設定です。
その若者モンティも麻薬の密売人と普通ではないですが、7年の懲役を作り出すためでしょうか。それが事件性を帯びているかと言うとそうでもなく、ふたりの親友、プエルトリコ人の恋人、おいた父親などモンティをとりまく人間関係はごくありふれています。
26歳の若者が人生を締めくくる24時間とは如何なるものか?この辺りを、周囲に善意の人々を配して描きます。淡々とした物語のなかに、手で触れそうな時間の経過が感じられます。本書の魅力の第一はこれでしょうね、疲れた時に読むと、たぶん心に浸みるのかもしれません。訳者あとがきに、
本書のトーンは暗く力強い。そのエレガントな文体はひりひりするほど切れ味がいい。登場人物もわれわれ誰もが住んでいる世界の住人である。(ニューヨーク・タイムズ)
NYの住人でもない日本人が翻訳でこの小説を読んで、どうなんでしょう。
正直、『卵をめぐる祖父の戦争』のユーモアのある語り口の方が好きです。
映画の方を先に見たので、読んでいて、エドワード・ノートン、フィリップ・シーモア・ホフマン、バリー・ペッパーがちらつきます。映画は原作にかなり忠実に作られています。ラスト近くにモンティの白日夢がありますが、映像は強いですね、この画像1枚ですべてを語っています。
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