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読書 船戸与一 満州国演義 6 大地の牙 [日記(2011)]

大地の牙―満州国演義〈6〉 (満州国演義 6) やっと第6巻が出ました。5の発刊は2009年1月ですから2年4ヶ月振りです。5を読んだのが昨年の7月ですから10ヶ月も間隔が開くと殆ど忘却の彼方。
 南京事件で終わった第5巻に続き第6巻は、泥沼化する日中戦争(1938年)、ノモンハン事件、独ソ不可侵条約(1939年)に揺れる満州を描きます。

 そうした政治状況が敷島四兄弟にいかなる運命をもたらしているのか、いまひとつ分かりません。
 太郎は、石原完爾によって法匪と非難される高級官僚として満州政庁の奥の院から四方を睥睨し、憲兵大尉・三郎は、東北抗日聯軍の指導者・楊靖宇を己の分身の如く追い、青龍同盟を失った次郎は、無聊がこれほど苦しいものだとは想像もしていなかった、とうそぶいてまたも硝煙の世界に帰り、四郎は関東軍特務・間垣徳蔵に操られる様に漢口で軍直轄の慰安所の開設に携わります。

 徐州会戦、 張鼓峰事件、ノモンハン事件、独ソ不可侵条約→ナチスのポーランド侵攻と1938年,39年の事件が要領よく配置され、四兄弟はそれぞれの立場で係わるわけです。しかし、時代の流れを傍観している感は否めません。徐州占領で火野葦平のうわさ話が出たり、吉本の『笑わし隊』などエピソードも配され、目配りは効いているようですが、『演義』ですから四人それぞれがもっと時代に揉まれるストーリーを期待していたのですが。太郎が阿媽(女中)に手を付けて囲ったり、四郎と盧青芳のラブストーリーを予感させながらあっさり殺し、今度は劇団『燭光』時代の映子と関係を復活したり、これは演義とは言えませんねぇ。

 次郎と四郎が20年ぶりに出会います。次郎は間垣徳蔵に拳銃を突きつけ四郎を満映(満州映画協会)に送り込みますが、ちょっと作者のご都合主義ですね。しかしながら遂に、“満州の夜の帝王”と言われた甘粕正彦の登場です。『五族協和』『王道楽土』の理想と欺瞞が交差する『満映』を描いて、満州の闇に切り込むんでしょうか?5、6巻と少し期待外れなんですが、7巻に期待が膨らみます ⇒裏切りは無しです、船戸与一さん。

タグ:読書 満州
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