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読書 浅田次郎 中原の虹(3)(4) [日記(2011)]

中原の虹 第三巻
 第3巻では西太后も光緒帝も亡くなり、醇親王(光緒帝の弟)を摂政に6歳の溥儀が清朝最後の皇帝の座についています。戊戌変法で光緒帝を裏切った袁世凱は醇親王によって失脚させられていますが、1911年に起こった辛亥革命、東三省で独立王国をなしつつある張作霖など混沌とする清朝末期、袁世凱が北京に呼び戻されます。呼び戻したのは元東三省総督の徐世昌で、清王朝の幕引きのために呼び戻したのです。

 50%が歴史のお勉強、50%が小説です。『中原の虹』の主人公は架空の李春雷と実在の張作霖です。教科書の中の『張作霖』が肉体をもって、おそろしく下品に

腕に覚えのある野郎はいるか?相手になるぜ
とか

おめえら貧乏人を殺したくはねぇ。おれ様とともに戦え。同じくたばるにせえ、北京の豚野郎どもの兵隊よりも、白虎張(張作霖のこと)のほうがよかろう。飯を腹いっぱい食わしてやる。

などと下品な言葉とともにモーゼルをぶっ放しますが、これが歴史小説を読む楽しみです。張軍団のno.2で後に満州国の総理大臣となった張景恵の豆腐屋稼業は笑います。後世の我々は、辛亥革命も、袁世凱の中華帝国も知っているわけですが、皇帝即位式でビビル袁を励ます徐世昌、一言が災いして東三省の警察長官から浪人へ、張作霖に拾われて奉天派の重鎮となる王永江、東三省総督・趙爾巽、袁金鎧、革命派の宋教仁、梁啓超(小説では梁文秀)などなど、知ってる人物も初めてお目にかかる人物も縦横に暴れまくり、吠え嘆息し・・・これは楽しいです。

 『中原の虹』は、張作霖が東三省の王となり中原を狙う物語(主)と、ドルゴン(清の太祖ヌルハチの子)が満州の地から中原に攻め入る物語(従)が平行して進行します。ドルゴンは長城を超えて中原に出て清を建てますが、張作霖は一旦は北京に覇を唱えながら日本軍によって爆殺され志半ばで斃れます。日本軍は、張作霖亡き後の東三省地に、清朝の廃帝・愛新覚羅溥儀を据えた満州国を作ります。満州族による漢民族の支配(清朝)の構図が、日本民族による満州族(五族)支配の構図に入れ替わる歴史の不思議を、作家は書きたかったのでしょうか?
 『中原の虹』は、満州国の建国はおろか、張作霖爆殺事件にさえ行き着かず長城をを超えるところで終わっています(続編が『マンチュリアン・レポート』)。張学良、溥儀はいまだ幼く、張景恵、王永江、袁金鎧もまだまだ活躍の余地があり(満州国で活躍し)ますから、続編を期待しています、浅田次郎さん。

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