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映画 父と暮せば(2004日) [日記(2011)]

父と暮せば 通常版 [DVD]
 NHK・BSの「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本 家族編」からの一編。井上ひさしの舞台戯曲の映画化だそうです。

 舞台は昭和23年広島、視点は福吉旅館の一室に固定されています。登場人物は主人公・福吉美津江(宮沢りえ)と父・福吉竹造(原田芳雄)のほぼふたりだけ。以下ネタバレですからご用心。


 観客はふたりの会話であれこれ想像することになりますが、見ていてアレと思うはずです。竹造は何処か遠くに行っていて最近美津江の元に帰って来たようです。何故か竹造は飲み食いしませんがふたりの了解事項のようです。そのうち竹造が自ら言い出します、美津江の青年に対するときめきから竹造の胴体が生まれ、ため息から手足が出来た云々、なんと竹造は娘心配のあまりあの世から娘の元に現れた幽霊だというのです。
 「異人たちとの夏」も亡くなった両親と再会する話しでしたが、この映画もまた「異人」と暮らす話しなのです。

 図書館に勤める美津江は、原爆の資料を収集する青年と出会い、青年から恋を告白されます。当時の女性の慎ましさから美津江は逡巡し、あの世でこの様子を見ていた竹造は娘を応援するためこの世へ舞い戻ったわけです。ここから映画がスタートするのですが、竹造が「異人」であることが分かっても違和感は全くありません。ホラーじゃないですから当然怖くはないのですが、娘を思う親心で、あの世からこの世に来るのは当然と感じてしまいます。宮沢りえと原田芳雄の演技はそれほどに息が合って自然体です。
 原田芳雄はどちらかと言えばこわ面のアクション俳優のイメージがありましたが、名優ですね。

 美津江が逡巡する理由は、ふたつありあます。ひとつは、仲のよかった女学校の同級生が原爆で亡くなり、自分だけが生き残ったことです。同級生はあらゆる点で美津江より優れていて、生き残るべきは彼女であった、ところが生き残ったのは自分であるという負い目です。もうひとつ、美津江は、原爆で倒壊した建物の下敷きとなった瀕死の竹造を置いてひとり逃げた負い目です。迫り来る炎のなかで共倒れを避けるため、竹造は美津江を逃がすのです。原爆投下の日、何処にでも合った究極の選択です。渋る美津江に竹造は「じゃんけん」を挑み、無理やり美津江に勝たせて逃がします。くさいストーリー、くさい演出ですが、これが泣かせます。演「劇」は類型化された悲劇を舞台に閉じこめることで成り立っている、という典型なのかもしれません。

 広島、原爆はもういいようにも思うのですが、お盆にはお薦めの一作です。

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竹造ひとり芝居                   究極のじゃんけん

監督:黒木和雄
原作:井上ひさし
出演:宮沢りえ 原田芳雄


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