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映画 若者のすべて(1960伊仏) [日記(2011)]

若者のすべて【HDニューマスター版】 [DVD]
 有名なルキノ・ヴィスコンティとは如何なるものか、たまたまNHK/BSでやっていたので見ました。アラン・ドロンとニーノ・ロータ(音楽)は「太陽がいっぱい」のコンビで、こちらも楽しみです。原題はRocco e i suoi fratelli(ロッコと彼の兄弟たち)というそうで、映画はタイトル通りアラン・ドロン演じるロッコと4人の兄弟の物語です。全編モノクローム。
 イタリアはWWⅡの敗戦国です。公開の1960年が舞台と考えると、敗戦後15年たって復興が進み、人々は職と華やかな生活を求め地方から都市へ流入した時代の物語です。貧しい故郷を捨て、母親ロザリアと兄弟4人のへロンバルディ一家は南部のバジリカータから長男の働くミラノへ出てきます。ブーツに例えられるイタリア地図で云うと、バジリカータは足の甲にあたりイタリアを縦断する旅行です。「若者のすべて」は、この母親と5人の息子達が繰り広げる栄光と悲劇?の物語です。

長男ヴィンチェ
一足先にミラノに出稼ぎ?に来てジネッタと知り合い結婚する。家庭第一で、ロンバルディ家とは距離をおく頼りにならない長男。ボクサーを目指していたことがある。
次男シモーネ(レナート・サルヴァトーリ)
長男に倣ってプロボクサーとなりいいところまで行くが、奔放な性格が災いしてボクシング界を去るはめに。娼婦のナディア(アニー・ジラルド)に惚れ生活を共にするが、後に別れる。ナディアと弟ロッコとの関係に嫉妬し、ナディアを取り戻そうと暴行を加え挙げ句の果てに殺害してしまう。
三男ロッコ(アラン・ドロン)
本編の主人公。家を出た長男、放蕩の次男に代わって母親ロザリアを支える。退役後、ボクシングでチャンピオンとなってロンバルディ家を支える。シモーネと別れたナディアと出会い恋におちシモーネとナディアを争うが、兄弟の絆を優先させナディアをシモーネにゆずる。ファイトマネーを担保にナディアを殺害したシモーネを救おうとする。
四男チーロ
ロッコが兵役に行っている間、母親を助けロンバルディ家を支える。逆境にめげず学校を卒業して大手自動車会社に就職。シモーネ、ロッコを冷静な目で判断し、シモーネの殺人を警察に届ける。
五男ルーカ
年の開いた少年。これといってドラマに関わることはないが、「未来」を託された存在。
母親ロザリア(カティナ・パクシヌー)
五人の息子を溺愛する、伝統的なイタリアの「母」。
ナディア(アニー・ジラルド)
美貌の娼婦。シモーネ、ロッコとの三角関係となり、シモーネに暴行の末殺害される。
ジネッタ(クラウディア・カルディナーレ)
長男ヴィンチェの婚約者で後に結婚。

 貧しい故郷を後にして、ミラノに出た五人の兄弟が繰り広げる愛憎劇です。五人はそれぞれ若者のステレオタイプとして描かれます。長男は妻子とのつましい生活を選択し、次男は殺人犯に堕ち、三男はプロボクサーのチャンピオンとして成功、四男は苦学して堅実な未来を選択します。未だ少年の五男に、ドラマの未来が託されているのでしょう。
 
 気になるのは、次男シモーネと三男ロッコの確執とナディアをめぐる三角関係です。見当違いかも知れませんが、旧約聖書のカインとアベルを連想してしまいます。カインとアベルの物語に三角関係は登場しませんが、ヤハウェをナディアに置き換えた兄弟の争いと考えられます。故郷を後にしてミラノに来て、この悲劇が起こります。ラストでロッコが故郷に帰ろうと言いますが、故郷こそがエデンなのでしょう。
 
 アラン・ドロンは「太陽がいっぱい」でスターとなり、「若者のすべて」「地下室のメロディー」「山猫」「冒険者たち」と1960、70年を代表するヨーロッパ映画の男優となります。母親ロザリア役で「誰が為に鐘は鳴る」のカティナ・パクシヌーが出演しています。

監督:ルキノ・ヴィスコンティ
音楽:ニーノ・ロータ
出演:アラン・ドロン  レナート・サルヴァトーリ アニー・ジラルド クラウディア・カルディナーレ カティナ・パクシヌー

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