映画 陽暉楼(1983日) [日記(2012)]
宮尾登美子の「土佐もの」は東映によってさかんに映画化されています。
鬼龍院花子の生涯(1982) ⇒鬼龍院政五郎(興行師)・・・仲代達矢、監督:五社英雄
陽暉楼(1983) ⇒太田勝造(芸妓娼妓紹介業)・・・緒形拳、監督:五社英雄
櫂(1985) ⇒富田岩伍(芸妓娼妓紹介業)・・・ 緒形拳、監督:五社英雄
夜汽車(1987) ⇒田村征彦(博徒)・・・萩原健一、監督:山下耕作
寒椿(1992) ⇒富田岩伍(芸妓娼妓紹介業)・・・ 西田敏行、監督:降旗康男
こちらでも書きましたが、原作は宮尾登美子ですが中身は東映が得意とする「任侠もの」です。なかでも女衒・富田岩伍が登場するものが5本のうち3本、岩伍の人気の高さが伺えます。
小説の方は、陽暉楼一と謳われ舞一筋に生きてきた主人公・桃若(房子)が花柳界の荒波にもまれ、妊って最後は結核で死ぬと云うストーリーです。この芸妓哀史みたいな小説を東映が映画化するとどうなるか?。見事に任侠ものに仕上がっています(笑。原作では登場しなかった岩伍を房子の実父・勝造(大勝)として起用し、勝造の敵役に大阪のヤクザ稲村組、親分が小池朝雄で代貸に成田三樹夫。このコンビがまた典型的な東映の親分と代貸で、笑ってしまいます。陽暉楼の方も、しっかり者の芸妓あがりの女将(倍賞美津子)と頼りない主人(北村和夫)のコンビ。これも東映得意の設定です。
高知進出を企む稲村組との抗争で大勝(岩伍)の子分秀次(風間杜夫)が殺され、大喝はひとり稲村組に殴り込みをかけます。大勝は死に、秀次の女珠子(浅野温子)がひとり大阪駅で大勝を待ちわびるシーンで幕。この辺りはもう正統派任侠映画です。
桃若(池上季実子)はどうしたんだ?と云われそうですが、これがどうも中途半端。綺麗だし儚いんですが、(小説もそうですが)わけの分からない地方名士の息子に惚れて妊り、出産の無理がたたって結核で死にます。小説は、前半の子方屋時代の房子があって芸妓・桃若の悲運が成り立つわけで、映画のように後半だけだと桃若の悲劇も取って付けたようで何の事か分かりません。「陽暉楼」だけでは観客動員できないので「岩伍覚え書」を足し込んで任侠路線に走ったところが、この映画の失敗です。どっちつかずです。妓楼という特殊世界と女衒というこれも裏世界の職業の組み合わせを生かして、「陽暉楼」という華やかな舞台で女衒・大勝が稲村組と大抗争を演じるというストーリーの方が面白いと思います。小説「陽暉楼」の文芸路線という手もありますが、当時の東映では誰も期待しません。
緒形拳の女衒・大勝(岩伍)は絶品です。女優陣では浅野温子、倍賞美津子ですね。
監督:五社英雄
出演:緒形拳 池上季実子 浅野温子 倍賞美津子
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