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BSシネマ 映画 第十七捕虜収容所(1953米) [日記(2012)]

第十七捕虜収容所 [DVD]
 この手の映画の代表作は何と言っても「大脱走」でしょうね。脱走することが捕虜に課せられた義務であり、自らの手で運命を切り開いてゆこうとするアメリカ的「自由」賛歌の映画でした。「大脱走」からちょうど10年前に造られた「第十七捕虜収容所」は、そうい云った英雄主義とはチョット違った、ドイツ運捕虜収容所からの脱走を描いています。
 第十七捕虜収容所の捕虜全員が米軍の軍曹というキャンプ(日本陸軍風に云うなら内務版?)から、ふたりの捕虜が脱走を図ります。ところが、ふたりは待ちかまえたドイツ兵によって射殺されます。また、密かに持ち込まれたラジオも看守兵に見つけられ没収されます。で、オイ、スパイがいるんじゃないか?ということで映画が進展することになります。最初の脱走は失敗し最後の脱走は成功しますから、捕虜収容所=脱走の構図でもあるわけですが、メインはこの軍曹ばかりのキャンプの暮らしと、捕虜に紛れ込んだドイツ軍のスパイの謎です。

 英雄は登場しません。スパイを暴き最後の脱走を企てるセフトン(ウィリアム・ホールデン)がそれ当たるのですが、このセプトン、(赤十字が届ける)煙草を賭金にネズミのレースを主催したり、密造酒で酒場を開き、1分何セントかで望遠鏡でロシアの女性捕虜収容所を覗かせたりして、同僚から巻き上げた金品でドイツ看守兵を買収するという、まぁ第十七捕虜収容所の小悪党なわけです。当然にキャンプの中でも孤立しています。
 冒頭の脱走も、その成否を自分が胴元となって賭けを開き、ひとり勝ちで大量の煙草をせしめますが、こういうことが重なって、セフトンこそがスパイであると決めつけられ制裁を受けます。セプトンはスパイを見つけ出して濡れ衣を晴らし、ラストの脱走へと至ります。

 モノクロームだし、舞台の大半は収容所の室内、女性はひとりも出ない、というけっこう地味な映画です。凸凹コの漫才コンビが座を盛り上げ、スパイを操る看守、捕虜収容所長(オットー・プレミンジャー)などけっこう笑わせます。ネズミのレースや密造酒場他のセフトンの商売は、いかにもありそうです。1952年に出版されたマイケル・ギルバートの「捕虜収容所の死」を読んでも、収容所にはラグビーやバスケットボールに熱中するグループ、劇団を組織して演劇に情熱を燃やすグループまであり、多彩な捕虜の日常が描かれていますから、そうなんでしょう。ナチの捕虜収容所長や看守が皆が皆「シンドラーのリスト」のレイフ・ファインズみたいなわけは無いし、捕虜の方もスティーブ・マックイーンやチャールズ・ブロンソンでは無いわけで、そういう意味ではリアリズムと適度のコメディが効いた佳作です。
 脱走・脱獄ものには、ポール・ニューマンの「暴力脱獄」があります。こちらもお薦めです。 

 監督がビリー・ワイルダーは「情婦 」「翼よ! あれが巴里の灯だ」しか見てませんが、「情婦」は絶対のお薦め。ウィリアム・ホールデンはよく分からない、とにかくクールです。TVの「スパイ大作戦」で有名になったピーター・グレイブスが重要な役どころで出演しています。
 捕虜収容所と脱走の話は、何もドイツ軍と米軍の話に限りません。日本にも「カウラの突撃ラッパ」(中野不二男)という実話があります。
 
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                            おはようフェルプス君
 
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ウィリアム・ホールデン オットー・プレミンジャー ピーター・グレイブス

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