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映画 ソルジャー・ブルー(1970米) [日記(2012)]

DVD名画劇場 ソルジャー・ブルー<HDリマスター版>
 インディアンというと、西部劇の背景としては無視されるか野蛮人の悪役です。アメリカ大陸を侵略した白人の側から描くから当然そうなりますが、侵略されたインディアンから見れば白人や騎兵隊こそが悪役となるはずです。『ソルジャー・ブルー』と『小さな巨人』は、その視点のターニングポイントとなった映画として有名です。

 と言うことで見てみました、キャンディス・バーゲンも出ていることだし...。ところが、うわさに聞くラスト15分の虐殺シーンはそれなりですが、期待していたものとちょっと違います。

 騎兵隊の給与を運ぶ輸送隊がシャイアン族に襲われます。20名ほどの騎兵隊員が殺され、かろうじて生き残ったのがホーナス二等兵(ピーター・ストラウス)と、婚約者を訪ねるために馬車に同乗していたクレスタ(キャンディス・バーゲン)。生き残ったふたりはインディアンの目を逃れて、徒歩で騎兵隊の砦を目指します。このふたりの弥次喜多道中が、インディアンvs.白人の仮想討論、擬似恋愛となって、ラストの「虐殺」を際立たせると云う構図です。

 クレスタは、実はシャイアン族に拉致されて、輸送隊を襲ったシャイアン族の酋長「灰色狼」?の妻だっと告白しています(どういう経緯で助けだされ、婚約者のいる砦に向かっているのかは説明されていませんが)。この映画で、クレスタはインディアンの立場を擁護し白人を非難する擬似インディアンとなり、ホーナスが白人を代表し、頭の皮を剥ぐなどのインディアンの悪行を詰ります。
 
 どこまで行っても平行線ですが、このインディアンvs.白人にもうひとり新手が加わることで均衡が崩れます。インディアンに武器を売る行商人の登場です。
 白人(騎兵隊)とインディアンが戦い、白人(武器商人)がインディアンにライフルを売り、インディアンはライフルを買うために白人を襲って金を奪う、というトライアングルの一角が武器商人と云うわけです。
 武器商人を許せないホーナスは、馬車に火をつけてライフルを葬り、商人の怒りを買って足を撃たれてしまいます。クレスタは薬草を見つけ、蛇を捕って食料とするなどインディアンの知恵で負傷したホーナスを介抱し、二人は窮地を脱します。白人vs.インディアンvs.武器行商人という三つ巴の関係で、インディアン(クレスタ)が一頭抜きん出たようです。
 余談ですが、冒頭でフォークロア調のロングドレスで登場したキャンディス・バーゲンが、ここに至って武器商人から貰った布地を切って作った真っ赤なミニのドレスに着替えます。サービスですね、ありがたい話です(笑。

 そして最後は、800人の騎兵隊が500人のインディアン、それも殆どが女、子供のシャイアン族を虐殺する「サンド・クリークの虐殺」になだれ込んで行きます。クレスタは騎兵隊の奇襲を知ってシャイアン族の村に知らせに走り、インディアンとしてこの虐殺の目撃者となり、騎兵隊に復帰したホーナスは、加害者側のひとりとしてこの虐殺を体験します。
 行動を共にし、お互いに惹かれあったクレスタとホーナスが、加害者と被害者なるわけです(ホーナスは虐殺には参加しませんが)。 「虐殺」は、いまとなってはそれほど残虐なシーンと云うわけでありませんが、1970年代にこの騎兵隊の悪行を描くことは勇気がいったのではないかと思います。火が放たれ、子供の首が飛び、女性は犯されます。
  こういう映画が作れるということは、ハリウッドの懐の深さでしょうか。
 
 お薦めかと云うと、期待したほどの出来ではないですが、西部劇の変遷のひとつして見てもいいのではないでしょうか。次は『小さな巨人』です。

 監督のラルフ・ネルソンですが、シドニー・ポワチエの『野のユリ』を撮っています。『ソルジャー・ブルー』よりコッチのほうがお薦めです。

監督:ラルフ・ネルソン
出演:キャンディス・バーゲン ピーター・ストラウス

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ktm

たしか高校生の頃の映画ですね。
ここからインディアンの見方が変わりました。
それまではジョン・ウェインの西部劇に毒されていましたから。

それと、かなり前に読んだこの本でも
「戦争中毒―アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由」
アメリカ軍の見方が変わりました。

by ktm (2012-12-07 19:14) 

べっちゃん

似たような映画にケビン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』があります。1990年の映画なので、コチラの方がもう少し複雑です。お薦めです。
by べっちゃん (2012-12-08 08:24) 

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