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BSシネマ チャイコフスキー(1970ソ) [日記(2013)]

チャイコフスキー [DVD]
 『戦争と平和』は第1部の途中で寝てしまったので、この時代のソ連映画にはあまりいい印象を持っていません。『カラマーゾフの兄弟』は何とか寝ないで最後まで見ましたが、面白いとは云えません。社会主義リアリズムか何か知りませんが、なんとなく国の威信がかかっているようで重厚長大だが面白くないです。映画の裏にあのブレジネフがいるような気がします(笑。
 チャイコフスキーはロシアの生んだ大作曲家ですが、ロシア革命の前に亡くなっていますから、ソ連が胸はって制作することも無いわけですが、『ドクトル・ジバゴ』を造るわけにもいかないので、トルストイ、ドストエフスキー、チャイコフスキーとなるんでしょうね。『懺悔(1984)』『父、帰る(2003)』などは見て感心しました。
 と与太話を並べないと感想に入れません。やはりソ連映画、ブレジネフ映画でした。2部構成、2時間半のチャイコフスキーの伝記映画です。
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                              キリール・ラヴロフ
 
 冒頭でチャイコフスキーは友人のニコライ・ルビンシテインに作品(ピアノ協奏曲1番)を散々に言われていますから、1975年頃でしょうね。この頃チャイコフスキーはペテルブルグからモスクワへ移り、ニコライの創ったモスクワ音楽院で講師をしています。この大作曲家はいつも難しい顔をしていますが、理由の説明は一切ありません(代表曲が「悲愴」)。天才はヘラヘラしていてはいけないのでしょう。

 オペラ歌手デジレ・アルトーとの恋愛と破局もサラッと流され、音楽好きな富豪メック夫人からの財政援助とこの夫人との関係ももうひとつ分り辛いです。このメック夫人から14年にわたって援助を受け1200通の手紙が交わされていますが、同じ街に住んでいながら一度も会ったことがないという不思議な関係です。作曲に専念するため別荘まで提供され、パーティーにも招待されますが、すっぽかして別荘からも逃げ出します。「夫人の好意に答えられない」とか言い訳していますが、よく分かりませんねぇ。プラトニックな愛と言いたいんでしょうが、何とも不自然。
 
 1877年に、アントニーナという教え子から求愛され結婚します。アントニーナからラブレターが届き、どんな娘か確かめるために道端に馬車を止めていたところ、革命家と間違われて警察にしょっぴかれます、これには笑います。1881年にアレクサンドル2世が暗殺されていますから、物騒な時代だったんでしょう。ちなみに、チャイコフスキー(1840~1893)と『悪霊』のドストエフスキー(1821~1881)は同時代の人です。

 1877年は『白鳥の湖』初演の年で、映画でも幻想的なバレエが披露されます。この映像は素晴らしいです。
 アントニーナとの結婚はうまくゆかなかった様で、入水自殺までしています。

 第2部ではこの大作曲が功成り名を遂げとゆくわけです。メック夫人との文通、オペラ「スペードの女王」が幻想的に描かれます。「スペードの女王」で主人公がカード必勝法を聞き出そうと伯爵夫人を脅し、誤ってこの夫人を殺してしまいます。この辺りがチャイコフスキーとメック夫人に擬せられている様ないない様な。名曲『悲愴』(交響曲6番)の初演後9日でチャイコフスキーは亡くなって幕。
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                 アリョーシャとチャイコフスキー
 
 という天才作曲家の苦悩と「悲愴」の生涯が、名曲の数々とともに描かれます。この映画を裏から見るとどうなるのか?。
 チャイコフスキーは、1893年コレラによる肺水腫で53歳の生涯を閉じます。彼の死因について、1978年に新説が発表されます。チャイコフスキーは男色家であり、息子か何かをチャイコフスキーに誘惑された貴族が皇帝に訴えたために、チャイコフスキーの名誉を守る意味もあって服毒自殺を強要されたち云うものでした。この男色というキーワードでチャイコフスキーの生涯を再編成するとどうなるのか?。
 特に女性との関係ですね。デジレ・アルトーとの恋愛、3ヶ月しか続かなかったアントニーナとの結婚、多額の援助を14年間受けながら一度も会わなかったメック夫人との「プラトニック」な関係。邪魔したのはこの性癖だったのかもしれません。1970年当時には、そんな噂は無かったんでしょう。あっても社会主義リアリズムは取り上げませんね。
 アリョーシャという召使が、亡くなるまでチャイコフスキーに影にように従っています。遺産はこのアリョーシャに贈られたようで、このアリョーシャの描き方と云うのがなんとなく意味ありげです。嵐の夜に雷が怖いからと、このアリョーシャを自分の寝室に呼び込んだりしています。このアリョーシャに、ロシアでは有名な(切手にもなっている!)俳優を起用しているんですが、その辺りも何となく...。
 と云うようなゲスの勘ぐりで見てはいけないんでしょうね。
 
 クラシックに弱い私にはもうひとつ退屈な映画でした。チャイコフスキーのあの苦虫を噛みつぶしたような苦悩が全然分かりません。ツルゲーネフを登場させて、ふたりでロシアの現状を嘆いていますが、何か取って付けたようです。
 たぶん、音楽はすべてチャイコフスキーの曲なんでしょうが私に「白鳥の湖」と「ピアノ協奏曲1番」しかわかりませんでした。こういう映画は、クラシック音楽の素養が要求されそうです。同じ大作曲家でもミステリ仕立ての『アマデウス(1984)』は面白かったんですが。
 言い忘れました。メック夫人とチャイコフスキーとの連絡役をつとめる夫人お抱え音楽家は、『カラマーゾフの兄弟』で次男イワンを演じたキリール・ラヴロフです。
  音楽のディミトリ・ティオムキンは『ローハイド』『北京の55日』『OK牧場の決闘』の作曲者だそうです。
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  『カラマーゾフの兄弟』のキリール・ラヴロフ
 
監督:イーゴリ・タランキン
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演:インノケンティ・スモクトゥノフスキー キリール・ラヴロフ  マイヤ・プリセツカヤ

タグ:BSシネマ
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