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BSシネマ エド・ウッド(1994米) [日記(2013)]

エド・ウッド [DVD]
 アメリカでは、映画は一大産業です。1年間にいったい何本くらい作られているんでしょう。大半は泡沫と消え、日本の劇場で上映される映画はほんのひとにぎりなんだと思います。そんな泡沫映画監督エド・ウッドの話しです。
 エド・ウッドは「史上最低の映画監督」と云われているらしいです。『プラン9・フロム・アウタースペース』の解説を読むと、そのダメ監督振りがよく分かります。では、その「史上最低の映画監督」が何故伝説となり映画になったのかです。その秘密を描いたのが『エド・ウッド』、そういうことでしょう。

 エド・ウッド(ジョニー・デップ)は、恋人ドロレス(サラ・ジェシカ・パーカー)とたったふたりのプロダクションを設立し、少人数のフタッフを使い、自身が監督、制作、脚本おまけに主演までやってのけるという低予算映画を制作しています。映画ですからある程度の資金が必要ですから、300ドルの出資でヒロインを替え、出資者の息子を出演させ、大爆発の要請があればストーリーと関係なくそのシーンを用意すると云う節操の無さ。『プラン9・フロム・アウタースペース』の資金提供者は宗教団体であったため、ウッドはスタッフ全員を入信させています。映画を作るためであれば、悪魔に魂まで売ってしまうという“映画狂い”。

 何がウッドをそこまで駆り立てるのか?。ティム・バートンの描くエド・ウッドは実に生き生きしています。1シーンの撮影が終わると、感に堪えかねたように「パーフェクト」を連発し、撮影中、カメラの隣のディレクターズチェアに座って俳優と一緒に台詞を口ずさみます。映画は売れず、家賃にも事欠く有様ですが、この史上最低の映画監督は心底楽しんで映画を作っているんだということが伝わって来ます。
 ウッドを突き動かしているのはこれですね。撮影終了後、不都合なシーンがあったので撮り直しをしないのかとカメラマンに問われ、撮り直しはしない、映画はしょせん虚構なのだからとウッドは答えています。ウッドにとって出来上がった映画はどうでもよく、映画を作ることに意味があったのでしょう。

 『エド・ウッド』にはベラ・ルゴシ(マーティン・ランドー)というドラキュラ俳優が登場します。ルゴシは一世を風靡した怪奇俳優で往年の大スターですが、今では落ちぶれてアヘン中毒。このルゴシをウッドは口説いて自分の映画に出演させます。無名監督が無名俳優を使った低予算映画ですから、何か目玉となるものが欲しかったわけです。剝落して孤独な往年のスターはウッドによって束の間の輝きを取り戻します。
 ルゴシの他、何故いるのかわからないオカマのバニー(ビル・マーレイ)、霊能者アメージング・クリズウェル(ジェフリー・ジョーンズ)、怪奇俳優ヴァンパイラ(リサ・マリー)、元プロレスラー、トー・ジョンソン(ジョージ・スティール)などクセのある人物がウッドを取り巻き、ワイワイ言いながら映画を作るわけで、これは楽しいに違いありません。

 現代の映画制作の現場がどういうものか分かりませんが、ティム・バートンは、自分と同じように、映画を作る“魔”に囚われたエド・ウッドを敬愛を込めて描き、ルゴシのように映画が人を蘇らせると云う夢を描きたかったのでしょう。
 後世に「史上最低の映画監督」と言われようが、好きな事に熱中できる人生とはすばらしいです。ティム・バートンとは相性が悪いのですが、この映画はついて行けました。

 でお薦めかと、ティム・バートンが趣味に走っていますから、普通に映画を楽しむにはちょっと苦しいですね。ちなみにモノクロームです。

監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ マーティン・ランドー サラ・ジェシカ・パーカー ビル・マーレイ

タグ:BSシネマ
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