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映画 フライド・グリーン・トマト(1991米) [日記(2014)]

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 フライド・グリーン・トマトとは、アメリカ南部の料理だそうです。青いトマトを輪切りにしてパン粉を付けてフライにしたものですが、あまり美味しくはなさそうです。舞台がアメリカ南部アラバマ州ですから、そんなタイトルが生まれたんでしょう。

 何とも不思議な映画です。ジェシカ・タンディ(ニニー)がキャシー・ベイツ(エヴリン)に思い出を語って聞かせる話です。ニニーとエヴリンの現在とニニーの昔話、このふたつの時間軸で映画は進行します。

 子育ても終わって夫とふたりのエヴリンは、どうも結婚生活がうまくいっていないと感じているようです。何がどうということはないのですが、夫は帰宅するやビール片手にTVにかじりついてスポーツ観戦。夫婦の会話もないという生活で、不満のはけ口が過食。片時もチョコレートバーを離さず、肥満気味。そうした主婦向けのコンサルも受けているのですが、何か違う。

 そんな折り、83歳のニニーと出会い、ニニーの語る昔話に引き込まれます。ニニーの話というのは、イジー(メアリー・スチュアート・マスターソン)とルース(メアリー=ルイーズ・パーカ)というふたりの女性の物語です。舞台がアラバマ州のため、主人公が子供時代を回想する『アラバマ物語』を連想します。黒人差別のエピソードがあったり、その辺りは「南部」という土地柄で似ていなくもないです。

 イジーという中性的な女性と女らしいルースという女性の友情が、南部の美しい風景の中に描かれます。イジーとルースの接点は、イジーの兄。ルースはイジーの兄の恋人という関係で、イジーの兄が亡くなりふたりの結びつきは深まります。
 ルースが結婚してふたりの関係は一旦途絶えますが、イジーは夫の暴力に苦しむルースを助け出し、ふたりの友情が復活します。イジーとルースは駅の側に“ Whistle Stop Cafe”を開き、このカフェの名物料理が「フライド・グリーン・トマト」。映画は、カフェに集う人々とのほのぼのとした交流を描くわけですが、「ほのぼの」だけではありません。ルースの元夫が子供(イジーと生活を始めた時にルースは妊っていた)を取り返しにやって来て、イジー達に撃退されるという事件が起き、その後ルースの元夫は行方不明となり、イジーは殺人容疑で捕まり裁判となります。裁判は、牧師のアリバイ証言で無罪となりますが、牧師の証言は偽証であることが明かされ、犯人はイジーじゃないかというミステリー要素が加わります。牧師の偽証も、ちょっとしたカラクリがあって楽しめます。

 というようなニニーの思い出話、とくにイジーの生き方にエヴリンはいたく感動し、引っ込み思案で内気な彼女が、チョコレート・バーから解放され仕事を始めます。
 ここまで、登場人物はほとんど女性。男性はというと、ビール片手にTVでスポーツ観戦するエヴリンの夫と、ルースに暴力を振るう元夫、イジーが好きなマッチョな保安官くらいしか登場しません。駄目な男性を尻目に、イジーが活躍?するジェンダーの映画です。従って、エヴリンが何故イジーの生き方に感動したのか、男の私には全く分かりません(笑。
 イジーの生き方に共感し、目覚めたエヴリンは、駐車スペースを横取りした車を壊し、風通しをよくするために自宅の壁をハンマーでたたき壊すという、とんでもないオバサンに変身します。これもまたよく分かりませんが、ニニーの昔話が、エヴリンの心に風穴を開けたんですね。

 で、ルースの元夫を殺したのはイジーなのか?殺したとすれば死体はどうしたのか?。ラストで「とんでもない」結末が明かされます。もうひとつの謎が、物語の語り手ニニーです。ニニーの思い出話に彼女自身が全く登場しません。ニニーはいったい誰なのか?、これもラスト明かされます。

 この奇妙な映画を一言で言うと、ニニーが語るイジーとルースの物語に、太めの中年オバサン・エヴリンが勇気づけられ、更年期を乗り切ってゆくという物語です(笑。

 ここを読んでやっと分かったのですが、「イジーとルースの関係は単に「親友同士」とされており、原作における同性愛はほぼ消されている」ということのようです。どうりで、私には理解できなかったわけです。女性の方が見れば、また違った理解の仕方があるかもしれません。
 
 この映画の面白いところは、Dバイオレンスや殺人、南部の黒人差別などハードな事件が、ユーモアの衣に包んで描かれていることです。極めつけは死体の処理方法。キャシー・ベイツとジェシカ・タンディの軽妙な語りと演技が、すべてをノスタルジーに封じ込めている、そのあたりが見どころです。

 キャシー・ベイツは、この映画の前年に『ミザリー』でオスカーに輝き、ジェシカ・タンディはその前年に『ドライビング Miss デイジー』でこれもオスカーを獲得しています。ふたりが、もっとも輝いた頃の共演です。
 キャシー・ベイツは『黙秘』という名作があります。『フライド・グリーン・トマト』で、エヴリンは自信を取り戻すとともに、だんだん綺麗になってゆきます。これにはビックリしました。汚れ役ばかり見ていたのですが、やはり女優さんですね。ジェシカ・タンディは『コクーン』にも出演していますが、ヒッチコックの『』に出ています、ご存じですか、ご存じですよね。

監督:ジョン・アヴネット
出演: メアリー・スチュアート・マスターソン メアリー=ルイーズ・パーカー

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