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ドストエフスキー 悪霊 第1部 [日記(2014)]

悪霊〈1〉 (光文社古典新訳文庫)
 『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』を読んだので、念願の『悪霊』です。思想的怪物スタヴローギンを主人公に据え、ロシア革命前夜の「内ゲバ」事件(ネチャーエフ事件)をモデルに描いた小説だということで、何時かは読みたいと思っていました。亀山センセイの新訳がkindle版で発売されたのを機会に読んでみました。

 第1部しか読んでいないので、何処が名作なのか全く分かりません。『カラマーゾフ』で言えば、父親のフョードル以下長男ドミトリー、次男イワンと三男アレクセイのカラマーゾフ一家が一堂に会し、私生児スメルジャコフが現れる第1部のようなものでしょう。後々に物語を回転させる人物が次々に登場し、手際よく?その人物と背景が説明されます。

 第1部で最初に登場するヴェルホーヴェンスキーは、かつては論壇を賑わした論客だったらしいですが、今では貴族のワルワーラ夫人に寄生して酒を飲んでトランプばかりしている有閑人。ところが、亀山センセイの解説を読むと、農奴解放の後の改革派、保守派が錯綜する当時のロシアの論壇について行くことが出来ず、酒と博打に逃げ込んだ知識人らしいです(そんなことは、素人には分かりません)。ヴェルホーヴェンスキーが、フョードルのような好色漢なら分かりやすいのですが、パトロンのワルワーラ夫人が持ってきた結婚話にオロオロするだけ。この夫人も、農奴解放後の世情に不安を抱いている貴族階級の象徴なのだそうです。つまり、この時代のロシアの時代背景を理解しないと、理解が困難なようで、これは手強い。
 
 ニコライ・スタヴローギンはその動静が伝えられるだけで、なかなか登場しません。スタヴローギンは、大学卒業後将校となりますが、決闘事件を起こして兵士に格下げになったり、帰郷してからも知事の耳を噛んだり鼻を持って引きずり回したり、奇矯な振る舞いの挙句にスイスか何処かに行ってしまいます。その地で母親ワルワーラ夫人)の友人の娘リザヴェータと関係があったような無かったような、また、足の悪い狂女マリヤ・レビャートキナと密かに結婚したらしいのです。スタヴローギンというこの物語の主人公は、一筋縄ではいかない人物のようです。

 第1部の山場は、日曜日に一同が会する場面です(第5章)。ヴェルホーヴェンスキーの息子でニコライの友人ピョートルが外国から帰郷し、マリヤと飲んだくれの兄レビャートキンまで現れ、ついに真打ちが登場します。登場したと思ったらマリアを掻っ攫って退場。これも?。
 スタヴローギンとマリヤの「結婚」について、スタヴローギンの友人キリーロフは「変人趣味」と断じています。スタヴローギンは、わざと足の悪い狂女をマリアを「かついで」、舞い上がった彼女がどうなるかどんな振る舞いをするかを見極める実験をしているのだというのです。ヨーワカラン話です。
 この物語の語り手Gによると、
 
 スタヴローギンは、恐怖心というものを知らない性質の男だった。決闘の現場でさえ、冷静に敵の発射を待ちかまえることができたし、狙いをさだめて、残忍ともいえるくらい冷静に相手を撃ち殺すこともできた。彼はまさにそんな男で、人を殺すにしても、完全に覚醒しきった状態でやってのけ、けっしてわれを忘れるということはない。分別をなくして何もわからなくなるような怒りの発作にかられたことなど、いちどとしてなかったような気もする。

第1部で、スタヴローギンは天才と狂人の紙一重の存在として登場します。

 このよく理解できない第1部は、亀山センセイの解説を読むと、

農奴解放令以後、新たな自由化の波に翻弄され、社会全体が混沌とした様相を見せはじめていた

頃の物語で、

『悪霊』第1部には、読者がうかつに読み飛ばすことができない暗示や伏線が満ち満ちている

らしいです。よく分からないままに第2部へ...。(感想文になっていません)

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