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映画 アメイジング・グレイス(2006英) BSシネマ [日記(2014)]

アメイジング・グレイス [DVD]
 選んでみているわけではないのですが、ここのところ『リンカーン』『グローリー』と奴隷解放映画が続いています。有名な「アメイジング・グレイス」という歌は、元奴隷船の船長にによって作詞されたということを初めて知りました(作曲者は不詳)。この曲をネタ元に、奴隷貿易廃止に貢献した英国の国会議員ウィリアム・ウィルバーフォースを描いた映画です、だそうです。

 奴隷というとアメリカの黒人奴隷を連想しますが、その奴隷をアフリカからアメリカ、西インド諸島に運んでいたのがポルトガル、イギリスです。フランシス・ドレークも、元をたどれば奴隷船の船長のようです。
 アフリカの西海岸には、象牙海岸、黄金海岸とともに有名な「奴隷海岸」という地名があります。奴隷が貿易の産品として取り扱われていたわけで、「奴隷貿易」という言葉も存在します。

18世紀になると、イギリスのリヴァプールやフランスのボルドーから積み出された銃器その他をアフリカにもたらし、原住民と交換、さらにこうして得た黒人を西インド諸島に売却し、砂糖などをヨーロッパに持ち帰る三角貿易が発展した。奴隷貿易

 映画の中でも語られていますが、劣悪な環境で輸送途中で多くの奴隷が命を落とし、無事西インド諸島に着いても、過酷な労働で病気になって死んでいます。この非人道的な奴隷貿易に対して、ウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)、トマス・クラークソン(ルーファス・シーウェル)、オラウダ・エクィアノ(ユッスー・ンドゥール) などが反対運動を起こします。一方イギリス議会は、奴隷貿易で利を占める議員が大半であり、奴隷貿易を違法とする法律(奴隷貿易法)は議会を通過しません。
 ウィリアムたちの戦いと、奴隷貿易法を如何に議会を通過させるか、というのがこの映画のテーマです。議会のシーンは『リンカーン』を連想します。『リンカーン』では、議会で憲法修正第13条(奴隷廃止)を通すため、ポストを餌に反対派議員の切り崩しが行われましたが、『アメイジング・グレイス』でも奇策が用いられます。いずれの国でも、抵抗勢力を押さえて法案を通すのは大変なようです。

 合衆国憲法修正第13条の批准は1865年で、英の奴隷貿易法は1807年。アメリカに先立つ半世紀前に奴隷解放の先べんを付けたことになります。
 ところで、イギリスの奴隷制度はどうなっていたかということです。映画では、トビー・ジョーンズ扮する貴族が、ハイチのプランテーションから連れてきた黒人奴隷を、負け込んだカード賭博の支払いに当てようとして、ウィリアムが憤然と席を立つシーンがあります。ここによると、イギリスには奴隷の所有に関する法律は存在しなかったようです。1772年に、アメリカから連れて来られた奴隷をジャマイカに送ろうとしたイギリス人が裁判で違法の判決を受けます。この判例によって、イギリスでは公式に奴隷制度が違法となったようです。この裁判を後押ししたのが、トマス・クラークソン(ルーファス・シーウェル)で、映画でも活躍します。
 つまり、イギリスに奴隷制度は存在せず?、奴隷解放運動というのは、アメリカや西インド諸島に奴隷を送り込む奴隷貿易を禁止する運動だったわけです。

 で面白いかというと、「アメイジング・グレイス」もウィリアム・ウィルバーフォースも馴染みが無いので、たいして面白くはありません。悪妻と宇宙人(トミー・リー・ジョーンズ)の登場した『リンカーン』の方がまだしも、です(笑。


監督:マイケル・アプテッド
出演:ヨアン・グリフィズ ベネディクト・カンバーバッチ マイケル・ガンボン アルバート・フィニー  トビー・ジョーンズ

タグ:BSシネマ
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