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映画 我が大草原の母(2010中) BSシネマ [日記(2014)]

我が大草原の母.jpg 母.jpg
 素直な映画です。1960年代、飢饉で親から捨てられた上海の孤児3000人がモンゴルに里子として送られます。孤児を育てた母親と育てられた息子の、20年の情愛を描いた映画です。

 「上海_孤児」で検索すると、「毛沢東の大躍進政策」がヒットします。共産党の第2次5カ年計画(1958~1962年)が失敗して中国全土は大飢饉に陥り、2000万~5000万人の餓死者を出ます。余談ですが、この政策の失敗で毛沢東は失脚し、のちの復権と文化大革命に繋がります。この大飢饉によって生まれた3000人孤児たちが主人公です。
 
 チチグマ(ナーレンホア)は、夫の反対を押し切ってシリンフ(トゥメンバヤル)、シリンゴラ(イリグイ)の二人を引き取ります。孤児を引き取るには、乳牛を買っていることという経済的要件が必要です。乳牛を持たないチチグマは羊毛を売り、姑は婚礼の思い出の品まで提供して乳牛を手に入れ、二人を引き取ります。チチグマにはすでに息子がいるわけですから、新たに孤児二人を養う必要は無いはずです。子供は労働力としての財産なのかと思って見ていたのですが、どうも違うようで、モンゴルの人々にとって、「国家の子供」を養うことは当然の行為と考えていたようです。
 チチグマと夫は、実子と分け隔てなくシリンフとシリンゴラを育て、ふたりもまたチチグマを実母として成人します。モンゴルの大草原を舞台に、親子の情愛は、なかなか泣かせます。

 教師となったシリンゴラに生みの母親が現れます。シリンゴラを挟んで、育ての母と生みの母の間で深刻な関係が生まれるのかと思ったのですが、驚いたことにチチグマは上海の母親の出現を喜びます。警察に引っ立てられる罪人に温かいお茶を振るまい、とがめる警官に、飢えた牛にでも水を与えるのに、寒さに震える人間にお茶を振る舞うのが何故悪いのかと食って掛かるチチグマの人間性です。結局シリンゴラは実母とともに上海に向かいます。娘はいずれ嫁に出さなければいけない、上海が嫌になったら何時でも草原に帰っておいでという辺りに、チチグマの本音がチラリと出ます。

 そしてシリンフにも実の父母が見つかり、シンリフはチチグマのすすめで上海に会いに行きます。この映画の語り手でもあるシンリフは、牛を追って草原を駆けまわる朴訥な牧夫。詩を書く青年としても描かれていますから、少しバイアスのかかった青年です。上海の孤児は「国家の子」だというチチグマに対して、シンリフは、自分は「母さんの子」だと言います。母と子の絆は、共に過ごした歳月と愛情が作っているわけです。
 上海の実父母は上海に留まることを勧めますが、シンリフは迷うこと無くチチグマと大草原を選択し、モンゴルに帰ってゆきます。

 これと言ってドラマがあるわけでもなく、いや3000人の孤児が上海からモンゴルに里子としてやってきたこと自体がドラマですが、淡々と描かれる母子の絆は感動的です。

監督・脚本:ニンツァイ 
出演:ナーレンホア トゥメンバヤル イリグイ

タグ:BSシネマ
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