映画 ジャッカルの日(1973) BSシネマ [日記(2014)]
フレデリック・フォーサイスの有名なサスペンス小説の映画化です。『ジャッカルの日』『オデッサ・ファイル』『戦争の犬たち』と立て続けに発表した小説がベストセラーとなっています。いずれの小説も面白いです。
『ジャッカルの日』は、一匹狼の殺し屋によるフランス大統領/ド・ゴールの暗殺を扱った小説(映画)です。ド・ゴールは天寿を全うしていますから、この誰もが知っている結末に向けてフォーサイスは「暗殺事件」を描いたことになります。失敗した暗殺をどう描くのか?、フォーサイスの小説家としての腕の見せどころです。
ド・ゴールは、ナチによるパリ陥落でロンドンに亡命政権「自由フランス」を建て、大戦終了後は、首相、大統領を歴任した大物政治家です。アルジェリア独立戦争では民族自決を支持し、アルジェリアは1962年にフランスから独立します。この独立を国益の損失と考える武装組織OASがド・ゴールに対してクーデター、暗殺を企てています。
『ジャッカルの日』は、ド・ゴール暗殺のためにOASに雇われた殺し屋ジャッカルとフランス官憲の闘いを描き、暗殺が如何に計画され実行され、何故失敗したか、フランス官憲が如何にジャッカルを追い詰めたかというサスペンスです。
この起こってもいない「暗殺事件」の捜査を担当するのが、ルベル警視(マイケル・ロンズデール)。内務省とOASの闘いは、ルベルvs.ジャッカルの闘いとなります。
イギリスMI6からルベル警視にジャッカルの情報がもたらされ、ルベルの追跡が始まります。この追いつ追われつの追跡劇がふたつめのポイント。
もうひとつは国際性、暗殺の対象と暗殺現場がフランスで、ジャッカルが銃と証明書(傷痍軍人)を偽造するのがジェノバ。ジャッカルの正体を追い詰めるのがロンドン。ジャッカルはアフファ・ロメオを駆ってイタリアからフランスへ疾駆します。この辺りは、ジャーナリスト・フォーサイスの得意分野でしょう。残念なのは、全編英語。どうせ字幕でみるのであれば、仏語、英語、伊語でやって欲しかった。
暗殺の舞台は、8月25日に催される市庁舎前のパリ解放記念式典。ジャッカルは傷痍軍人を装い松葉杖をついて現れます。銃は、松葉杖に隠されています。広場を見渡せるアパートの一室に陣取り、松葉杖から取り出した銃でド・ゴールに向かって銃弾が発射されます。当然、暗殺は失敗します。このシーンです。
映画ではこれだけですが、小説ではもう少し解説があります。ド・ゴールがレジスタンスの兵士に勲章を授与する瞬間に銃弾は発射されます。ド・ゴールがレジスタンスの頬にキス(左右の頬を合わせるアレです)するために屈んだために、銃弾はそれたのです。このラテン人のキス(挨拶)がゲルマン族のジャッカルには読めなかったわけです。これがオチです。暗殺は、失敗でもなく成功でもなかったわけです。小説を読んだ折には、関心しました。
リチャード・ギアとブルース・ウィリスが出演した『ジャッカル(1997)』は、リメイクだというものの全くの別ものです。1973年の「ジャッカル」の方が見応えがあるのは、小説に忠実な脚本と監督/フレッド・ジンネマン(『真昼の決闘』)の演出の冴えでしょう。
ということで、「ジャッカル」を見るなら、絶対こちらです。小説もお薦めです。
監督:フレッド・ジンネマン
出演:エドワード・フォックス マイケル・ロンズデール
タグ:BSシネマ
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