浅田次郎 一路(上下) [日記(2015)]
浅田次郎の時代小説は、新撰組三部作のようなシリアスなものと、『お腹召しませ』『五郎治殿御始末』などのユーモア溢れるものがあります。本書は、どちらかというと後者に属します。
文久元年(1861年)、西美濃、田名部郡の領主・蒔坂左京太夫の供頭・小野寺一路が、参勤交代を仕切る物語です。
小野寺一路は、江戸表屋敷の生まれで19歳の今日まで国許に足を踏み入れたこともない江戸者。 北辰一刀流免許皆伝、有名な学塾の塾頭を務めるという英才です。一路の父親が失火で屋敷を焼き焼死したため、急遽帰国して供頭を継ぎ殿様の参勤交代を取り仕切ることになります。ところが、一路は、供頭としてのノウハウを父親から引き継いでいません。全くの素人が、殿様以下大勢の家臣を引き連れて参勤交代を無事果たすことが出来るのか?。物語は、国許・田名部から江戸まで中山道をたどる12日間の旅程、ロード・ムービーならぬロード・ノヴェルです。
小野寺一路は、江戸表屋敷の生まれで19歳の今日まで国許に足を踏み入れたこともない江戸者。 北辰一刀流免許皆伝、有名な学塾の塾頭を務めるという英才です。一路の父親が失火で屋敷を焼き焼死したため、急遽帰国して供頭を継ぎ殿様の参勤交代を取り仕切ることになります。ところが、一路は、供頭としてのノウハウを父親から引き継いでいません。全くの素人が、殿様以下大勢の家臣を引き連れて参勤交代を無事果たすことが出来るのか?。物語は、国許・田名部から江戸まで中山道をたどる12日間の旅程、ロード・ムービーならぬロード・ノヴェルです。
蒔坂左京太夫は大名ではなく、七千五百石の旗本。旗本もこれくらい大身となると待遇は大名並みで、領国に住み参勤交代もあったのでしょう。従って参勤交代と言っても、50人程度が中山道を下るというごく小じんまりした参勤交代です。組織が小さいので、殿様と一路距離が近いという辺りも、この小説のミソです。
一路は、自宅の焼け跡から見つけた元和年間に書かれた参勤交代の記録「行軍録」を頼りに仕事を始めます。参勤交代は、大名の力を削ぐために幕府が作った制度だと教科書で習いました。そうした意味もあったでしょうが、一朝将軍家に事あれば、手勢を率いて江戸に馳せ参じる「行軍」が源だというのです。一路の見つけたものは、まさにその「行軍録」だったのです。ノウハウの無い一路は「行軍録」を忠実に実践します。つまり、形骸化した参勤交代が、一路によって中山道を攻め上る軍勢となり、それが本書のテーマとなります。
芝居小屋の裏木戸で贔屓の出待ちをし、町方に捕まったという御殿様松の廊下で飛び六方を踏み、「当分之間登城差控」となった馬鹿殿様
この馬鹿殿と一路のコンビが江戸を目指しますが、もうひとり、いやふたりこの参勤交代に色?を添えます。御殿様の後見人である蒔坂将監と側用人の伊東喜惣次。この小説の悪役で、江戸到着が遅れるなど参勤交代が失敗すれば御殿様は隠居 →取って替わることを狙っています。
ロード・ムービーならぬロード・ノヴェルですから、各本陣、要所難所にはたっぷりの見せ場が用意され、お家騒動まで加わって一行は無事江戸の到着するのか?、という小説です。趣味の問題かも知れませんが、『輪違屋糸里』『一刀斎夢録』に比べるとちょっと。NHK・BSでドラマ化されるらしいです。
タグ:読書
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