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映画 コン・ティキ(2012ノルウェー) [日記(2016)]

コン・ティキ [Blu-ray]
 トール・ヘイエルダールの『コン・ティキ号探検記』を原作とした映画です。原作は、ポリネシア人は南米から海を越えて渡ったという仮説を証明するために、8000kmをイカダで漂流するドキュメンタリです。冒険には違いないわけですが、原作を読む限り劇的なドラマがあるわけではなし、ユーモアとファンタジーに満ちた男とたちの冒険覃です。これをどう映画にするんだろうと思って見てみました。
 1947年のニューヨークです。ヘイエルダールは、ポリネシアの神ティキの像が南米大陸それとと似ていることなどから、ポリネシア人はイカダに乗って南米大陸から渡来したという著作の売り込みを始めますが、どの出版社も取り合ってくれません。自説が正しいと思うならオマエがイカダに乗って証明して見せろと言われたことで、「コン・ティキ号」の冒険に踏み出します。そんなことは不可能であり死ににゆくようなものだと誰もが言うなか、最初に賛成してくれたのが冷蔵庫のセールスマンのヘルマン。妻の尻に敷かれて冷蔵庫を売っているのに嫌気がさし、冒険がしてみたいようで、メンバーの中で一番存在を感じさせるキャラクターです。6人のメンバーは、
 
  トール・ヘイエルダール(33歳、ノルウェー、人類学者)リーダー
  エリック・ヘッセルベルグ(33歳、ノルウェー、ヘイエルダールの幼馴染、画家・彫刻家)天文観測(六分儀)
  ベングト・ダニエルソン(26歳、スウェーデン、人類学者)撮影係り、賄い
  クヌート・ハウグランド(30歳、ノルウェー、元レジスタンス)無線係
  トルスティン・ロービー(29歳、ノルウェー、元レジスタンス)無線係
  ヘルマン・ワッツィンゲル(31歳、ノルウェー、エンジニア)気象観測

 ヘルマンが参加することになって、ヘイエルダールの冒険は現実味を帯びてきます。クリスマスにノルウェーに帰る予定を変更してペルーに向い、ヘイエルダーは家族を放り出してコン・ティキ号にかかりきりとなります。米軍を説いて資材を供出して貰い、ペルーに飛んで大統領の協力を取り付け、イカダの材料のバルサ材を切り出しリマ近郊のカヤオに運びます。ヘイエルダールは、釘などを一切使わずバルサ材をロープで結び合わせ当時のイカダを再現します。航海の間に波に揺られてロープが切れるという批判もありましたが、当時の技術を使うことこそが航海を無事に乗り切る道だと考えます。古代ペルー人に出来たことは20世紀の人間にもできる筈であり、古代の知恵の方が優れているという彼の「ティキ信仰」です。
 冒険には資金が必要です。自殺に等しい冒険に資金は出せないと、出版社に断られる挿話が描かれたりします。映画ではサラッと流されていますが、これが一番大変だったのではないかと思います。資金集めのために「冒険」を撮影します。これが後にドキュメンタリー映画『Kon-Tiki』となり、1951年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞します。

 舞台は、大洋にぽつんと浮かぶイカダの上です。映画として成り立つためには、イカダという空間の内と外にどんなドラマを作るかです。
 
 トビウオが飛び込みシイラを釣り上げ、サメが牙をむき、嵐が襲いかかります。狭いイカダの上で男6人が顔を突き合わせていますから、当然諍いが起こります。ヘルマンはサメの出現でパニックに陥り、船長ヘイエルダールの命令を無視して銛を打ち込みサメを呼び寄せるという失態を演じ、無線機のアンテナをオウムが齧ったり、無線機が故障したり、小さな事件は跡を絶ちません。そんな平穏ななか、ヘルマンが足を滑らせて海に落ちサメに襲われそうになります。ヘイエルダールはオロオロし、クヌートが危険を顧みず飛び込んで助けます。実はヘイエルダールはカナヅチ。ヘルマンを助けたのは、船長の命令を無視して彼を非難したクヌートだったという、どうだこれが男だ!、みたいな挿話も描かれますがドラマ性には欠けます。
 ではイカダの外はどうだったかというと、家庭を放り出して冒険に賭けたヘイエルダールと奥さんの関係です。101日の後一行は無事ポリネシアに到着しますが、ヘイエダールにもたらされたのは離婚話です。確かに、男の冒険には家庭が一番の障壁です。ソクラテスもモーツアルトもトルストイも奥さんで苦労しています(笑。

 で面白いかというと(ノルウェーでは大ヒットしたようですが)退屈、といより地味。同様の漂流映画に『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』がありますが、こちらの方が映画としては面白いし数段優れています。
 長編ドキュメンタリー映画『Kon-Tiki』(英語版)があるはずだと動画検索してみると、The Kon-Tiki Expedition (english) on Vimeo”がヒットしました。ノルウェー放送協会の58分の記録映画です。オリジナルかどうか?ですが、お薦めです(但しナレーションは英語 →何となく分かります)。
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監督:ヨアヒム・ローニング エスペン・サンドベリ
出演:ポール・スヴェーレ・ハーゲン  グスタフ・スカルスガルド


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