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湊かなえ 往復書簡 [日記(2016)]

往復書簡 (幻冬舎文庫)
北のカナリアたち [DVD]
 映画『北のカナリアたち』が面白かったので原作を読んでみました。『往復書簡』は、「十年後の卒業文集」「二十年後の宿題」「十五年後の補習」の書簡体の短編小説3編が納められています。
 タイトルに卒業文集、宿題、補習とあるように、十年前、二十年前、十五年前の高校生、小学生、中学生時代に起こった出来事が、現在に投影されるミステリです。「二十年後の宿題」が『北のカナリアたち』の原案にあたります。
 
【十年後の卒業文集】
 高校時代、放送部に在籍した4人の女子高生の物語です。結婚式で久々に顔を会わせた3人は、消息不明のもう一人をあれこれ噂するうちに、消息不明の原因が高校時代の放送部の合宿にあったことに行き着きます。3人の「往復書簡」によって、男子高校生をめぐる恋の鞘当てや、女子高生の過剰な自意識の衝突やらが語られ、最後に真実があかされますが、少しトリッキーな設定です。

【二十年後の宿題】
 これが一番読みたかったわけです。
 『北のカナリアたち』の原案ですが、映画で描かれる殺人事件も、教師の不倫も、「歌を忘れたカナリヤ」もありません。映画は、定年退職した元小学校の女性教師が、夫の溺死事故に遭遇した6人のその後をたどるという小説の枠組みを借りて、幼い心に宿る悩みや孤独、罪悪感が、二十年経った後に解放されるというカタルシスを描いたのではないかと思います。
 一方小説の方は、(映画では登場しない)6人の小学生の現在を探る探偵役のを登場させ、この探偵と6人のうちのひとりを結びつけることで、二十年来の宿題をミステリ的に解決します。カナリヤも吉永小百合も登場しないぶん、映画には負けます(笑。

【十五年後の補習】
 ミステリとしてはこれが一番よくまとまっています。中学生の頃に知り合った男女が、結婚までこぎ着け、いざ結婚という時に男は青年海外協力隊に入りアフリカの奥地に行ってしまいます。日本とアフリカを往復する書簡によって、男が女の前から姿を消した理由、ふたりが関わった中学時代の「事件」の謎浮かび上がってくるというミステリです。

タグ:読書
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