百田尚樹 錨を上げよ [日記(2016)]
昭和30年、大阪の下町に生まれた作田又三の30年にわたるビルツィングスロマンです。作者も昭和30年生まれ、同志社大学やTV局の構成作家のエピソードも登場しまから、百田センセイの『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』のようなものでしょう。しかしまぁ、こんな破天荒で都合のよいビルツィングスロマンなどあるわけはないです。
ベストセラーの、特攻隊を描いた『永遠の0』、出光佐三をモデルとした『海賊とよばれた男』の二冊はテーマがハッキリしているので、たぶん誰が読んでも(好き嫌いは別として)分かり易いです。『錨を上げよ』は、万博、全共闘運動などの「昭和」を背景に、「ぼく」作田又三が錨を上げて人生の荒波に漕ぎ出してゆくストーリーです。上下巻1200ページ、舵の無い船があっちへフラフラ、コッチへふらふら、挙げ句の果てに「人生の長い航海は、これから始まるのだ。」と締め括られる未完の大ロマン?です。
で面白くないかというと、そうでもない。ハイライトを少し。
全共闘運動の余波がくすぶるキャンパスで、格差社会を潰すために又三が革命を目指したかというと、百田センセイですからそんなことはありません。又三は、反動の烙印を押され、女子大生に恋をしてウチゲバに巻き込まれ、良家の令嬢に惚れて京大生に破れます(笑。
またも女性に躓いてこの冒険譚も終了。そしていよいよTVの構成作家・百田尚樹の登場となり、話はタイ・バンコクへ飛んで...「人生の長い航海は、これから始まるのだ。」とシュトゥルム・ウント・ドラングの物語は(尻切れトンボ)に終わります。
賛否両論はあると思いますが、結構面白いです。
タグ:読書
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