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映画 夢(1990日米) [日記(2016)]

夢 [DVD]
 巨匠、黒澤明です。「スティーブン・スピルバーグ提供」とあり、何のこと?と思うのですが、日本では出資者がなくスピリバーグがワーナーに働きかけて実現した(wikipwdia)映画だそうです。そんな関係か、マーティン・スコセッシが出演しているという変わりダネ。

 「こんな夢を見た」という書き出し?で始まる8話からなるオムニバス映画です。黒澤の映画は『赤ひげ(1965)』を最後に(『どですかでん』は見てませんが)ドラマ性が失われ面白さに欠けます。『乱(1985)』は力が入りすぎて滑り、リチャード・ギアまで登場する『八月の狂詩曲(1991)』はテーマの解釈が通俗的、『まあだだよ(1993)』に至ってはほぼひとりよがり(個人的には好き)。『夢(1990)』は、創造力が枯渇しつつあった「巨匠」の当たりとハズレが混在する短編集です。
 
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第1話「狐の嫁入り」[手(チョキ)]
 日本人なら誰でも知っている「狐の嫁入り」。この嫁入り行列の狐の奇妙な動作が面白いです。「狐の嫁入り」を見ると不幸が訪れる、狐に謝ってこいと母親に言われた少年が狐の住む虹に向かう話ですが、許して貰えたのかどうか。会えなかったから、第2話以降の夢を見ることになったともいえます。

第2話 「桃畑」
 自然破壊が進み里山が荒れつつあるということは、1990年に黒澤明がしかもセリフ付きで映像化するほどのことはないと思います。衣冠束帯の雛人形が桃畑で雅楽を奏でる映像は、外国向けのような気がします。

第3話「雪女」
 登山者が冬山で遭難し雪女に助けられる話。ラストで捨てられたようなキャンプを発見しますが、たぶん、テントの中に凍死した自分を発見するのではなかと思います。

4話「トンネル」[手(チョキ)]
 復員兵が、全滅した部隊の兵士の幽霊と出会うという怪異譚。トンネルがこの世と冥界をつなぐ道となって、死を受け入れられない一個中隊の幽霊がトンネルから続々と登場する様は怖いです。お前たちは死んだんだあの世に帰れ!回れ右!前へ進め!と復員兵(中隊長)の号令が飛び、幽霊たちはトンネルに消えて行きます。犬に吠えられる復員兵もまた、死んだことが受け入れられない幽霊だと考えられます。解釈はいろいろですが、この話が一番気に入りました。

第5話「ゴッホ」[手(チョキ)]
 画家がゴッホの絵の中に入りゴッホ本人(マーティン・スコセッシ)に出会う話。「アルルの跳ね橋」など田園風景は幻想的です。黒澤は、生き急いで絵を描いたゴッホに自分を重ねています。ラストは「カラスのいる麦畑」ですから、テーマは「死」です。映像が綺麗。

第6話「原発事故」
 3.11の原発事故の後で見ると、何を今さらと思わないでもないですが、1990年に原発事故を先取りしたことは、ひょっとして凄いことなんでしょうか。

第7話「鬼」
 原爆戦争で荒廃した地球は、人間が鬼となって跳梁するというのも、何処かで聞いたような話。

第8話「水車村」
 死とは長年頑張った末の「ご苦労さん」。楽団と踊りで派手に葬儀が行われるのも分かりますが、80歳の自分への「ご苦労さん」なんでしょうね。第3話以降「死」がテーマとして扱われ、最後のオチが「ご苦労さん」では、何か騙されたような気がします。

 『乱(1985)』→『(1990)』→『八月の狂詩曲(1991)』→『まあだだよ(1993)』と、素人眼には、黒澤の映画はどんどん退化していったような気がするのですが。

監督:黒澤明 本多猪四郎
出演:寺尾聰 倍賞美津子 原田美枝子 頭師佳孝 マーティン・スコセッシ いかりや長介 笠智衆
 
 【当blogの黒澤明
羅生門(1950)
生きる(1952)
七人の侍(1954)
どん底(1957)
蜘蛛巣城(1957)
用心棒(1961)
椿三十郎(1962)
赤ひげ(1965)
影武者(1980)
夢(1990)・・・このページ 
八月の狂詩曲(1991)
まあだだよ(1993) 
雨あがる(2000)・・・脚本
どら平太(2000)・・・脚本
 7777.jpg7777!
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コメント 2

Lee

7777nice!おめでとうございます*\(^o^)/*
おかげさまで拙ブログも先日999-1000を通過しました。
塩野七生は黒澤明と家族ぐるみのおつきあいがあり、映画にも造詣が深いようです。昨年出た「ローマで語る」集英社文庫は映画についての息子との対談集で面白かったです。
by Lee (2016-07-31 11:32) 

べっちゃん

最近のniceは、本来の趣旨とは少し違ってきたようです。
by べっちゃん (2016-08-01 11:06) 

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