映画 デイブレーカー(2008米豪)

　原題: Daybreakers(Daybreakで夜明け)。いわゆる吸血鬼、ヴァンパイアものです。ちょっと吸血鬼について復習します(笑、

容姿：瞳が赤い、牙がある。黒マントを常用
特徴：不死。鏡に映らない。ネズミ、コウモリ、狼、時には霧に変身できる。昼間は棺で眠っている。招かれないと侵入できない
好きな物：人間の血、特に美女の血？。血を吸われた人間は吸血鬼になる
嫌いな物：太陽の光、ニンニク、十字架
弱点：日光を浴びると灰になる。吸血鬼を殺すには、心臓に杭を打つ、首を切り落とすという方法があり、銀の銃弾も有効

まだありそうですが、だいたいこんなところでしょうか。この映画でも、アンダーラインの基本の部分は押さえられています。太陽に弱いですから、吸血鬼の乗る車には昼間走行モードが備わっています　→マニアック！。

　人類は5%まで減少し、世界の95%が吸血鬼となった近未来の話です。吸血鬼は人間の血を飲まないと生きていけませんから、どうやるか。人間を飼育して血液を採取する(『マトリクス』で人間を栽培していたような)ために血液工場を作り、採取した血液を飲み物として販売するわけです。(そんなシーンはありませんが)たぶん人間狩りが行われているのでしょう。吸血鬼は死にませんから、血液の需要は供給を大幅に上回り、血液(食料)危機が訪れています。血液は配給制となり、配給量も減り暴動が起きるまで事態は逼迫しています。

　長期間血液を摂取しないと吸血鬼はどうなるのか？。サブサイダーという怪物に変身するようで、吸血鬼世界の軍と警察はこのサブサイダー対策に追われています。きっと国家間、民族間の戦争なんてない平和な世界なんでしょう。このサブサイダーがけっこう怖い。吸血鬼はコウモリの親戚？ですから、サブサイダーは翼を持ち天井からぶら下がり、吸血鬼を襲います。
　世界は、支配者の吸血鬼と吸血鬼に支配される絶滅危惧種の人類、吸血鬼の成れの果てのサブサイダーに分かれているようです。吸血犬、吸血猫がいそうですが登場しません。なぜ吸血鬼がここまで増えたのか？。イーサン・ホーク(主人公)の弟にそれらしいことを匂わせていますが、たぶん不死だからだと思います。呑みすぎて肝硬変になっても、吸血鬼にひと咬みして貰えばたちまち治る、じゃぁ吸血鬼にでもなるか...という話です。
　不死で戦争もない平和な理想世界？、でも血液が不足している。そうした世界の、吸血鬼vs.人間の物語です。

　で登場するのが人工血液の研究者ダルトン(イーサン・ホーク）、人間のコーマック(ウィレム・デフォー)。
　ダルトンが人工血液の研究者で吸血鬼、コーマックが元吸血鬼の人間、というところがこの映画のポイント。ダルトンは血液危機を救おうと研究に励みますが失敗。一方のコーマックは事故で吸血鬼体質？が消えた人間。吸血がいなくなれば血液不足は解消されるわけで、ダルトンも苦労しなくていいわけです。吸血鬼を人間に変え、地球を人間の手に取り戻そうと、元吸血鬼コーマックはダルトンに接触し、ふたりは吸血鬼を人間に戻す実験を始めます。
　吸血鬼は太陽の光に晒されると燃え尽きます。燃える一歩手前で光を止めるという荒治療をすると人間に戻るのです。免疫療法みたいなものでしょうか。さらに面白いのは、吸血鬼から戻った人間の血を吸うと、吸血鬼は人間に戻る(人間の方は咬まれても吸血鬼とはならない)。もうひとつ、吸血鬼が減り人間が増えると血液製造会社は潰れるので、会社としては是非とも阻止する必要がある。(これは描かれませんが)肝硬変が再発する、つまり不死でなくなる。このアイデアを考えたスピエリッグ兄弟(監督、脚本)はエライ！。
　その延長線上に何が考えられるかというと、吸血鬼と人間、つまり不死と死のコントロールです。不死というのは人間の究極の願望ですから、吸血鬼になりたい人間は沢山いる筈(だから人類の95%が吸血鬼になった？)。一方で吸血鬼は、人間の血を必要とする、太陽光線を浴びると死ぬ、昼間は活動できないなどの制約があり、不死の重圧に耐えきれない吸血鬼も出てくる筈です。吸血鬼映画のバリエーションがどんどん膨らみます(笑。ちょっと逸れました。

　映画の方は、人間に戻った吸血鬼の血を吸血鬼が吸い、吸血鬼の人間化が雪崩をうって起こり、人間が地球の支配者となる予感で幕。原題のDaybreakersのDaybreakは夜明けですから、そういうことです。吸血鬼は銃で武装し、人間はクロスボウ(ボウガン)で武装しています。???と思ったのですが、心臓に杭を打ち込むという吸血鬼必殺技です、ナルホド。
　けっこうB級度の高い映画ですが、脚本が良く出来ていて面白い！、お薦めです。

監督：マイケル・スピエリッグ　ピーター・スピエリッグ
出演：イーサン・ホーク　ウィレム・デフォー　サム・ニール　クローディア・カーヴァン