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映画 はじまりへの旅(2016米) [日記(2018)]

はじまりへの旅 [DVD]
 原題はCaptain Fantastic。6人の子供を、学校教育を受けさせず独自の方針で育てるベン(ヴィゴ・モーテンセン)一家の話です。その生活たるや、森に住む野生動物を弓矢で殺し、植物を育て、自給自足のサバイバル生活、ワイルド!。

 ベンは、格闘技を教え、ロック・クライミングやトレイルランで子供たちの身体を鍛えます。8歳の娘が読んでいるのがエリオットのゴシック小説。子供たちの読書は、ジャレド・ダイヤモンドの『銃、病原菌、鉄』、最新の宇宙理論、『カラマーゾフの兄弟』『ロリータ』と大人顔負け。おまけにドイツ語、フランス語、中国語など外国語が堪能で、エスペラント語まで話せます。長男は、高校にも行かず、プリンストンやブラウンなどの有名大学の合格通知を受け取っています。
 アメリカでは、義務教育を家庭で済ますことが出来るようです。数ヵ国語が話せ高い知性と教養を身に付けていますがコーラもホットドッグも知らない、これ何かおかしくなですか?。
 長男は偶然知り合った女性に熱くなって、いきなり結婚を申し込む始末。社会生活の基本的なルールが分かっていないわけです。子供は学校で社会性を学びますから、これではコミュニケーション能力を欠いた空気の読めない「伊之助」になってしまうんじゃないかと心配します。

 精神疾患で入院していた母親が自殺し、一家は葬儀のため、自家用バスで母親の実家への「旅」に出ます。途中で獲物を仕留めて食料を調達する計画がくずれ、一家の取った手段は「万引き」。ベンの理想、子供たちの知性と矛盾すると思うのですが、このエピソードを描くこと自体、ベンの教育を是認していない証でしょうね。
 ベンの妹宅に泊まった時のこと。ベンの教育に反対する妹に、ベンは「権利の章典」について妹の息子に質問します。高校生、中学生のふたりは答えられず、ベンの三女8歳のサージは完璧に答え、さらに自分の意見さえ付け加えます。俺の子供は、星をたよりに進み、食用植物、服の作り方、ナイフ一本で生きる術を知っている。心肺機能と筋肉は一流アスリート並みだとベンは見栄をきり、妹は、子供は学校に行き世界を知るべきだと反論します。
はじまり.jpg
 葬儀に現れた一家です。ベンは赤いジャケット、下のふたりの子供はコスプレ!。この格好でベンはキリスト教批判の演説をぶち、教会からつまみ出されます。母親は(仏教徒であるため)火葬し遺灰はトイレに流してほしいという遺言を残していました。母親の遺言を実行するため、ベンと子供たちは墓を掘り返し遺体を火葬にし遺灰をトイレに流します。

 話としてはこれだけです。森で自給自足の生活を送っている限りベンの理想は成り立ちますが、一旦外に出ると社会と衝突します。タイトルの『はじまりへの旅』とは、この理想と現実が衝突した後の世界への旅立ちだったわけです。この後、ベンは髭を剃り、長男は大学へいかずナムビア(アフリカ)を目指し、子供たちはそれぞれ学校へ行くことになります。ベンの理想は現実の壁の前で崩れ去ったのか?、難しいところです。本当に大事なのは、映画では語られないこの後の話です。

監督:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン フランク・ランジェラ キャスリン・ハーン

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 サンフランシスコ人

「アメリカでは、義務教育を家庭で済ますことが出来るようです....」

州にもよるのですが....

「数ヵ国語が話せ高い知性と教養を身に付けていますが」

現在、外国語は重視されていないです...
by サンフランシスコ人 (2018-11-03 06:03) 

べっちゃん

ご教授ありがとうございます。ホームスクーリングというそうですね。
by べっちゃん (2018-11-03 12:14) 

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