SSブログ

映画 赤い闇 (2019 ポーランド、ウクライナ、英) [日記 (2022)]

赤い闇 スターリンの冷たい大地で スペシャル・プライス[DVD]  原題、Mr. Jones。1933年のウクライナ飢饉(ホロドモール)を最初に西側に伝えたジャーナリストの話ですから、「スターリンの冷たい大地で」と副題が付きます。
 ひとりの男がタイプライター叩くシーンから始まります。「家畜の物語で怪物の話を語れば、皆も耳を貸し理解するはず」とナレーションが入ります。男はジョージ・オーウェル、男が書いているのは『動物農場』。『動物農場』は全体主義、専制政治に対する風刺寓話です。

 元首相ロイド・ジョージの外交顧問ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、ヒトラーとゲッペルスが乗る飛行機に同乗し、ヒトラーにインタヴューしてジャーナリストとして名を挙げます。独ソ戦でヒトラーと戦うことになるスターリンは、五カ年計画を掲げ集団農法による農産物の増産と農業国のソ連を重工業国への転換を図っています。ジョーンズは、公式資料に辻褄の合わない数字を発見し、世界恐慌の中でソ連だけが発展を遂げている謎を探るために、スターリンにインタヴューしようとモスクワに出掛けます。

 モスクワで当てにしていた友人の記者ポール・クレブは強盗に殺され、NYタイムスのモスクワ支局長ウォルター・デュランティ(ピーター・サースガード)を訪ね、支局員のエイダ(ヴァネッサ・カービー)からポールがスターリンの金脈を探るためウクライナの取材を計画していた事、そのために殺されたのだと教えられます。ジョーンズはウクライナに出かけ、そこで見たものは悲惨な飢饉の現実。穀倉地帯のウクライナから穀物をモスクワに送ったため飢饉が発生したのです。ソ連の発展ははこの穀物を輸出した外貨に支えられいた、つまりは搾取の上に成立していたわけです。現在の推計で、ウクライナだけで餓死者500万人だそうです。
 ソ連にとって都合の悪いことを嗅ぎ回るジョーンズは捕まります。保釈の条件は、ウクライナの飢饉は単なる噂に過ぎずソ連は順調に発展していることを、ロイド・ジョージに報告すること。条件をのめば、スパイとして捕まった6人の英国人も釈放するというもので、6人の英国人を人質にウクライナ飢饉の事実を消し去ろうというもので、ジョーンズはこれをのみ釈放されます。

 ジョーンズはウクライナ飢饉を公表し、ウォルター・デュランティは、飢饉は噂に過ぎないとジョーンズの報道を批判します。デュランティは、共産主義のソ連を持ち上げソ連は彼に便宜を図るという持ちつ持たれつのジャーナリスト。ソ連に関するレポートでピューリッツァー賞を受賞しています。ジョーンズは1935年、日本占領下の内モンゴルで取材中に誘拐され殺害されます、享年29歳。ジョーンズの殺害は、ソ連の秘密警察、NKVDによって犯された可能性が高いといわれています。
 そちなみに、中国でも毛沢東の政策によって大飢饉が起き、1000万人以上の犠牲が出ています。
 ジョーンズを通して全体主義、専制政治の悪を告発する映画です。面白いかと言われれば?ですが、ロシアのウクライナ侵攻とウクライナ国民の頑強な抵抗にはこうした背景もあったと云う意味では、観て損はありません。

監督:アグニェシュカ・ホランド
出演:ジェームズ・ノートン、ヴァネッサ・カービー、ピーター・サースガード

タグ:映画
nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。