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ロバート マキャモン 少年時代 [日記(2007)]

少年時代〈上〉

少年時代〈上〉

  • 作者: ロバート・R. マキャモン
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1999/02
  • メディア: 文庫


 1964年、アラバマ州南部人口1,500人の田舎町ゼフィーを舞台に、そこで起こった殺人事件を縦i糸に、12歳の少年が体験するの1年間の出来事を横糸に織りなす自伝色の濃いミステリー。ミステリーと云うよりファンタジーであろう。夢見る(空想)力を失っていない少年の幻視と1960年代の古き良きアメリカが堪能できる。(アメリカでは、ブラム・ストーカー賞と世界幻想文学大賞を受賞しているらしい)

 登場人物が多彩でミステリアスである。「魔術を使うとされる黒人の老女」ザ・レディー、心が読めると云われる赤毛の少女ザ・デーモン、真っ昼間、素裸で町徘徊する男(後に、何故彼が裸でいるのかという哀しい物語が語られる)、OK牧場の決闘の現場に居合わせた主張する老ガンマン キャンディスティック・キッド、はては「川に棲むという謎の生き物」オールド・モーゼス(なんと、主人公コーリーはこの怪物の喉に箒を突っ込んで、食われそうになった少女を救う!)、蜘蛛猿・魔王などなどミステリアスを通り越して笑ってしまう。このザ・レディーは、映画『matrix』の予言者そっくりで、算数のテストにパスする魔法の薬はないかと尋ねるコーリーに

「ええ、あるわ。メアリに頼んで十番の霊薬を飲ませてもらいなさい。そして家に帰ったら、猛烈に勉強するの、いままでしたことがないというほ
どにね。眠っていても算数の問題が解けるようになるくらい一生懸命に」
彼女は指を一本立てた。
「そうすれば効き目があるはずですよ」

十番の霊薬の霊験あらたかに、コーリーは試験にパスする。

 『少年時代』を読む楽しさは、読者それぞれの「少年時代」の思い出を主人公コーリーに重ねる楽しさである。自転車が生きている如く少年と冒険にのりだし、カーニバルの見せ物に心を躍らせ、飼い犬との交流、ガキ大将との喧嘩、一風変わった同級生など、誰もが持っている思い出を鮮明に蘇らせてくれる。夏休みを迎える喜びを、少年と飼い犬の背中に翼が生え大空を飛び回ることで象徴的に描いた描写は、読んでいるこちらの心も浮き立たせてくれる。プールサイドの駐車場で、車という車のラジオから一斉にビーチボーイズの曲が流れ、コーリーの「熱く焼けた背中を冷たいものが駆け昇ったり駆け下りたりした」描写は、ビートルズを初めて聞いた頃を思い出させてくれる。、面白い小説はたくさんあるが、楽しめる小説はそう多くはない。

レイ・ブラッドベリが好きなら →☆☆☆☆☆


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