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男と女Ⅱ 1986年 仏 [日記(2008)]


男と女 II

男と女 II

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


男と女』と『男と女Ⅱ』はクロード・ルルーシュの現実の映画、『男と女(アンヌ版)』とは『男と女Ⅱ』の中でアンヌがプロデュースした架空の映画です。ややこしいですが。

 クロード・ルルーシュ、フランシス・レイ、アヌーク・エーメ、ジャン・ルイ・トランティニャンですから、(何処かに書いてありましたが)完全に同窓会です。原題が“UN HOMME ET UNE FEMME:20 ANS DEJA”ですから、『男と女』の20年後を描いています。『男と女』はサン・ラザール駅でジャンとアンヌの抱擁で終わっていましたが、その後20年経ったふたりの出会いが描かれます。
 アンヌは映画プロデューサーとなり、娘のフランソワーズは女優、ジャンはレーサーを引退してレーシングチームの監督をしています。アンヌにはTVキャスターの恋人が、ジャンにも若い恋人がいます。ジャンの恋人とは、何と息子の嫁さんの妹!(何もこんな設定しなくともいいと思うんですがネェ)。しかしこの恋人がストーリー上重要な意味を持ちます。

 アンヌが娘のフランソワーズを起用し、巨費をかけて製作した映画がメディアから酷評され興行的にも失敗します。落ち込んだアンヌは『人生の谷間』で『美しい思い出』を映画にしようと20年ぶりにジャンを呼び出すところから『Ⅱ』が動き出します。映画は、若き日のアンヌとジャンの恋=『男と女』の映像をフラッシュ・バックに、1986年のアンヌとジャンの恋が進行します。
 と云うと、いわゆる『フランス映画』を想像してしまいますが、唐突に精神異常の犯罪者の脱獄事件が挟まれたり(これも物語に関わってくるのですが)、『男と女(アンヌ版)』の撮影現場を撮影するという謂わば『劇中劇』のスタイルを取ったり、構成が複雑で、期待したクロード・ルルーシュの叙情的な映像とは少し違います。
 『男と女(アンヌ版)』の試写会で、アンヌが『感動が無い』とつぶやく描写は暗示的です。20年と云う歳月がもたらすもの、時代の変遷をアンヌは悟るわけです。ところがですね、何とアンヌは撮り終えた映画をミステリーに作り替えてしまいます。20年前の『美しい思い出』をアンヌは自ら過去として葬り去ります。
 この『男と女(アンヌ版)』をプロデュースしたアンヌ自身がミステリーに改編するというエピソードは(そして映画の中では結果的に大ヒットするのですが)1966年で成立した愛の物語が、1986年には最早成り立たなくなっているということなのでしょう。愛の物語がミステリーに変わるというストーリーは、クロード・ルルーシュの精一杯の皮肉かもしれません。

 映画の終わり近くに、アンヌとジャンがセーヌ川のモーターボート・レースを観戦するシーンがあります。ふたりはそこで娘のフランソワーズ(アンヌを演じた)とジャンを演じた俳優の仲睦まじい姿を見かけます。若い世代の『アンヌとジャン』を見るわけですね。これも『男と女』が次の世代へ引き継がれたことを暗示しているのでしょう。そう見て行くと、ジャンが娘ほどに歳の離れた恋人がいることもルルーシュのたくらみなのでしょう。古い世代のジャンと新しい世代のアンヌのカップルを登場させ、もうひとつの『男と女』を描いて見せます。ジャンが若い恋人に云う『ふたりでいっしょに歳をとることは出来ない』と云う台詞は、映画の結末と主題を暗示させます。最後に、ふたりは20年前の思いでの海辺のホテルで1986年のアンヌとジャンとして結ばれます。

 20年後のふたりの、成熟した大人の恋を期待したのですが、ちょっと期待外れでした。クロード・ルルーシュのたくらみはもっと違うところにあったようです。この映画は、意外と含蓄のある哲学的な映画なのか、それとも駄作なのか、判断がつきかねます。

 それにしても、アヌーク・エーメはこの時54歳ですが、その美貌と気品は衰えず、美しいですね(老眼鏡をかけて新聞を読むシーはありますが)。20年ぶりにジャンと会う場面で、豊かな髪を手でかき上げるシーンは、ジャンならずともアンヌが帰ってきたことを感じ、見とれてしまいました。
アンヌの娘フランソワーズを演じるエブリーヌ・ブイックス(だと思いますが)は何処かアヌーク・エーメに似ていますね。ジャンの恋人を演じたマリー・ソフィー・ポカスも若い女の一途さを好演しています。第1作もそうだったのですが、『男と女』ならぬ『女と男』の映画です。
 10代の終わりに観た『男と女』の20年後に巡り会い、個人的には楽しめました。映画としては未消化なところが多いと思いますが、歳月に洗われた男と女と愛の移ろいを描き感慨深いものがあります。

監督:クロード・ルルーシュ
撮影:クロード・ルルーシュ
音楽:フランシス・レイ
キャスト
アヌーク・エーメ
ジャン・ルイ・トランティニャン
エブリーヌ・ブイックス
マリー・ソフィー・ポカス

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