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映画 善き人のためのソナタ (2006年独) [日記(2009)]


善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アルバトロス
  • メディア: DVD


 東ドイツ・ベルリン、国家保安省の取調室から物語は始まります。登場するのはヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)。時は1984年11月、ベルリンの壁崩壊から5年前です。原題“Das Leben der Anderen”は直訳すれば『他人の生活』とのことで、題名通り国家保安省による東ドイツの市民への盗聴の話です。↑ のヘッドフォンを付けた姿は盗聴だったんですね。私は、てっきりニュルンベルク裁判の同時通訳かなにかだと思っていました・・・笑。

 劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)の反国家的言動を暴くため、ヴィースラー大尉は盗聴を始めます。共産主義国家にあっては、芸術家は常に反国家的存在なのでしょうが、もっと生臭い理由があります。ドライマンと同棲する女優クリスタに横恋慕をした大臣がドライマンを陥れようという意図から出た盗聴なのです。映画は、ドライマンとクリスタの生活、それを盗聴するヴィースラーの物語が同時に進行します。

 ヴィースラーは国家と共産党に忠誠をつくす大尉です。絵に描いたような謹厳実直ヴィースラーが、ドライマンとクリスタの生活を覗き、大臣の権力をかさにきたクリスタへの邪な行動を知るに及んで、彼の忠誠心が次第に綻び始めます。この綻びが映画の主題です。公式サイトにあるキャプション、
 『盗聴器から聞こえてきたのは、自由な思想、愛の言葉、そして美しいソナタ・・・
それを聴いたとき彼は、生きる歓びににうち震えた--』
 これは書き過ぎです。確かに『愛の言葉』は独身の彼には応えたようで、盗聴が終わった後、自宅に売春婦を呼んでいます。売春は最も古い職業ですから東ドイツに存在しても不思議でも何でもないですが。自殺した演出家が誕生日プレゼントにドライマンに贈ったものが(たぶん)ベートーベンのソナタの楽譜ですし、盗聴の際ヴィースラーはドライマンの弾くピアノソナタを聴きます。ピアノソナタも要因なら、ドライマンの部屋から持ち出した『ブレヒト』もそのひとつでしょう。ともかくも、国家と党に忠実な国家保安省のヴィースラー大尉の『破綻』、これがピアノソナタにのって進行します。

 見終わって、この映画は果たしてカラーだったのか?と。モノクロの筈はないのですが、そう思わせる映画です。

 ヴィースラーを演じる、ウルリッヒ・ミューエの表情ひとつ変えない重厚な演技なくしてこの映画は成り立たないでしょうね。

監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
キャスト:
ウルリッヒ・ミューエ
マルティナ・ゲデック
セバスチャン・コッホ
ウルリッヒ・トゥクル

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