映画 紅の豚(1992年日) [日記(2009)]
宮崎自身がその演出覚書において、「疲れて脳細胞が豆腐になった中年男のためのマンガ映画」にしたいと記している。
とのことですが、確かに豆腐になった私の脳細胞に活力を与えてくれるアニメです。空を飛ぶという夢とヒコーキのメカは、中年にはたまらない魅力で、おまけにマダム・ジーナの様な魅力的な女性が出てくるのですから。
舞台は『世界大恐慌時のイタリア・アドリア海』だそうで、ボルコが読んでいる雑誌『CINEMA』が1929年号から時代が想定されるということで確認して見てみました。
なるほど。ムッソリーニがファシスト党を組織して独裁体制を敷いた頃です。ボルコはミラノで飛行艇の修理をしますが、修理に携わるのはすべて女性。ピッコロのおやじが云います、
『ここんとこ仕事が無くて、男はみんな出稼ぎに出ちまった。』(ピッコロのおやじ)
『世界恐慌ってやつか』(ポルコ)
【飛行艇】
宮崎アニメには凝ったメカが出て来て楽しいです。『紅の豚』は飛行艇オンパレード。ここで勉強させて頂きました、感謝。ボルコの乗る飛行艇はサボイアS.21だそうですが、同機は複葉機です。ボルコの乗る飛行艇は単葉機映画の中でも語られるように1機だけ製造された試作機で、宮崎駿の創造です。形はマッキM.33ですね。
サボイアS.21 マッキM.33
ボルコのライバル・カーチスが搭乗すり飛行艇がカーチスR3Cです。こちらは実在機です。ジミー・ドーリットルを調べていたときこの飛行機の画像を見つけましたが、1925年のシュナイダー・トロフィー・レースで優勝しています。その時の操縦者がドーリットルですから驚きます。
カーチスR3Cとドーリットル
【シュナイダー・トロフィー・レース】
映画の中で、フィオを巡ってボルゴとカーチスが空中戦の果たし合いをしますが、これはシュナイダー杯レースがモデルとなっているのですね。企業と国の威信を賭けて行われたレースです。
【紅の豚】
魔法をかけられて豚になった元イタリア軍パイロット、賞金稼ぎです。『ハレンチで怠惰な豚である罪』でイタリア官憲から追われています。何故豚なのか?説明はありません。豚という呼称はあまりイイ意味で使われませんが、豚と呼ばれようが如何にカッコイイか、『紅の豚』はハレンチで怠惰な人間に対するアンチテーゼのようなものでしょうか。この豚ですがトコトンカッコイイです。丸いサングラスに白いマフラーの飛行服姿、街では白いスーツにトレンチコートでハードボイルドに決めてくれます。『飛ばねぇ豚はただの豚だ』とかなんとか科白も決まっています(『ここではあなたのお国より、もうちょっと人生が複雑なの』ジーナがカーチスに云う科白です、コッチが好きです)。ポルコは2度人間の姿に戻ります。フィオに思い出話をしている時と、カーチスとの果たし合いが終わった時です。魔法が解けて人間に戻ったのか?ジーナとの関係はどうなったのか?
TVでも何度か放映されましたから、観られた方も多いでしょうが、一度じっくり観て下さい。「疲れて豆腐になった脳細胞」が蘇るかも知れません。
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