映画 仕立屋の恋(1989仏 Monsieur HIRE) [日記(2010)]
パトリス・ルコントです。
『髪結いの亭主』では、アラブ音楽に合わせて自己流のダンスを踊ることが趣味の変わった男が登場しましたが、今度は、禿で小太りの中年の仕立屋が主人公。外出は、地味なスーツにネクタイ、黒いコートに黒い靴の出で立ち。独身、家族友人もいない、仕事場でハツカネズミを飼っている、時々娼婦を買いにゆくという孤独で狷介な中年男。恋とは対極にあるこのMonsieur HIRE(ムッシュー・イール)が主人公です。
イールの唯一の楽しみは、部屋の窓から若い女性の部屋を覗き見ること。夜な夜な、レコードをかけて女性の部屋をじっと見ているのですから、同性の私でも気持ちが悪い。『善き人のためのソナタ』は盗聴でしたが、『仕立屋の恋』は覗き?
冒頭で若い女性が殺され、変質者?のひとりとして刑事がイールにつきまといます。覗きだけでなくイールは人殺しの変質者なのか?と目が離せなくなります。
ある夜、イールの覗きが女性に見つかります。ふと窓を見ると、向かいの部屋の窓に自分の部屋を覗く男性の姿が稲妻の光に浮かび上がるのですから、ホラーです。
ところが、この女性アリスは、イールの気を引くように買い物袋のトマトをぶちまけたり、挙げ句に部屋を訪ねてきます。アリスには恋人のいることが明かされていますから、これは何かある・・・。
『髪結いの亭主』のアントワーヌとマチルド、『仕立屋の恋』のイールとアリス。それぞれ自分の幻想に生き幻想を選択したが故に自らを滅ぼしてゆきます。パトリス・ルコントは男女が織りなす恋の深淵を見せてくれます。
監督:パトリス・ルコント
出演:ミシェル・ブラン、サンドリーヌ・ボネール
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