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映画 野いちご(1957スウェーデン) [日記(2010)]

野いちご [DVD]

 クロサワ、フェリーニとともに、20世紀3大監督のひとりと言われるイングマール・ベルイマンの作品です。『叫びとささやき』に比べるとずっとわかりやすい映画です。

 『叫びとささやき』では死んだ人間の霊を登場させ、三姉妹を取り巻く人間関係を鮮やかに切り取って見せました。『野いちご』では、イサクの見る夢と現実交差させて彼の78年の人生を描きます。

 78歳になる医師イサクが大学から名誉博士号を授与されることとなり、授与式の行われるルンドへ向かう十数時間に起こる出来事を描いています。
  医者として地位も名誉もあり、78歳になって名誉博士号を授与されるという、イサクの人生はそれなりに充実した人生であったことをうかがわせます。ところがこの十数時間のドライブで、イサクの人生の綻びが、次々と明らかになります。
 授与式向かう車に、ルンドに帰るイサクの息子の嫁マリアンヌが同乗することとなります。彼女は、夫との問題を相談するためにイサクを訪ねた様子ですが、夫婦間の問題を持ち込むことを拒否されたマリアンヌによってイサクの冷淡で利己的、独善的な性格が明らかにされます。

 ドライブの途中で立ち寄ったイサクの生家で、彼は白日夢を見ます。白日夢なのか、思い出の映像化なのか判然としませんが、この夢の中でイサクには結ばれなかった許嫁と再会し、若かりし頃の冷淡で利己的で独善的でもなかった頃の自分と再会します。許嫁が摘んでいたのがタイトルともなっている『野いちご』。

 夢から覚めると、そこでヒッチハイクでイタリアに向かう娘に出会います。この娘と許嫁がビビ・アンデショーンの二役であることは、明らかにベルイマンのたくらみでしょう。この娘と、医学生、牧師の卵のヒッチハイクをする三人を乗せ、途中で車が動かなくなった夫婦を拾いドライブは続きます。
 娘は医学生、牧師の卵のどちらと結婚しようかと思案し、医学生と牧師の卵は宗教の是非について論争し、夫婦は諍い、マリアンヌは夫との不和を抱え、イサクは自分の死を予感し、車は人生の縮図のを乗せて走ります。

 このモノクロームの地味な映画でベルイマンが描いたものは、孤独でしょうか。
 マリアンヌは、身ごもっていること、夫は憎み合う両親から生まれた自分は子供を望んでいないことをイサクに告白します。
 96歳のイサクの母親は屍の様だが生きている、イサクは生きながら死んでいる。イサクの息子もまた冷たい屍であり、この孤独と死が自分の子供に受け継がれることが怖ろしいと告げます。
 イサクの妻は、冷淡で自己中心的な夫との関係に耐えられず不貞をはたらいた事実までもが明らかにされます。

 ベイルマンは、イサクという人生の裏に潜む魔物を描きます。ではイサクに救いは無いのか?

 ヒッチハイクの娘、医学生、牧師の卵の三人は、博士号授与式の感動を伝え、別れの挨拶にやってきます。ドライブの途中で立ち寄ったガソリンスタンドの夫婦も、やがて生まれてくる子供の名付け親になってくれとイサクに頼んでいます。マリアンヌとイサクの息子の仲もどうやら落ち着き、ふたりは授与式のレセプションに踊りに出かけるようです。

 心配事や悲しいことがあった日は、子供の頃を思いだして心を慰めてきた 

子供の頃(野いちご)の回想シーンで、幕となります。

 半世紀も前の、スウェーデンの、しかもモノクローム映画をお薦めするわけにはいきませんが、見たい映画が無くなったと仰る方にはお薦めします。

監督・脚本:イングマール・ベルイマン
出演:
ヴィクトル・シェストレム
ビビ・アンデショーン
イングリッド・チューリン 

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