映画 ロスト・チルドレン（1995仏）

ロスト・チルドレン [DVD]

• 出版社/メーカー: パイオニアLDC
• メディア: DVD

『デリカテッセン』を見てハマりました。何がどうのと云うことはないのですが、要はあのジャン＝ピエール・ジュネ独特の仮想世界とユーモアと映像です。

  『デリカテッセン』は核戦争が起こったのかどうか知れませんが、荒涼とした（たぶん）パリの（人肉）肉屋を舞台にラブストーリーが展開しました。今回は19世紀？とおぼしきマルセイユ？（仏の港町はココしか知りません）を舞台に、サルバトーレ（薔薇の名前をご参照）じゃなかったロン・パールマンが掠われた幼い弟を捜す幻想譚です。

　登場人物が凄い。街頭芸人の怪力男、ストリートキッズ、シャム双生児、マッド・サイエンティスト、クローン人間の兄弟、侏儒（こびと）、（勝手に命名）脳だけ人間、ひとつ目族、蚤のサーカス団長･･･。これってサーカスではないですか！

　これらの人々が、霧の港町を舞台にそれぞれ自分の分身を探すかのように右往左往します。

　ストーリーの中心は兄ワン（ロン・パールマン ）の弟捜し。弟を掠ったのは一つ目族。一つ目族に幼児誘拐をそそのかせているのは夢を見る力が無いために急速に老化するクランク（ダニエル・エミルフォルク ）、クローン兄弟（ドミニク・ピノン）達。この流れに絡むのがストリート・キッズ達とそのリーダーの少女エミット 及び彼らをあやつるシャム双生児。･･･合ってます？何故子供を誘拐するかというと、子供から夢を盗むためなんです。奪った子供の夢を見ることでクランクの老化が防げるということだと思います。

　

ワンとエミット　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　夢世界への入り口ヘルメット

　たぶん、夢と老化の話しはストーリー上の小道具で、『ロスト・チルドレン』の隠れた主題は『自分探し』なのではないかと思います。自分探しというか欠落･ 空白を埋めるものを探しているのです。

　怪力男ワンは自分の分身としての弟を捜します。ワンに協力するミエットは、弟を捜している間にワンの中に自分には無い純粋さを見つけます。クローン兄弟達は誰がクローンのオリジナルなのかという自分のアイデンティを探し、シャム双生児は探し損ねて喧嘩をします。侏儒の女性と夢泥棒のクランクとマッド・サイエンティストと脳だけ人間と蚤のサーカス団長と一つ目族はどうなんだ？と云われても困りますが。

 　

クローン兄弟　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　一つ目族

　ストーリーは未消化ながら（私が未消化）、ジャン＝ピエール・ジュネの描く迷宮世界はゾクゾクします。緑を基調とした濡れた様な映像は幻想的です（マトリクスに似ていますが、コッチが先）。登場する小物、機械類も雰囲気を盛り上げます。他人の夢に侵入する電極の付いたヘルメット、一つ目族の暗視鏡（ナイトヴィジョン）のようなメガネ等々カラクリ仕掛けが楽しいです。当然、ピタゴラスイッチもあって、こちらも楽しめます。ダーク・ファンタジーのジャンルだと思うのですが、『パンズ・ラビリンス』と双璧でしょうね。

　

シャム双生児　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　脳だけ人間

　クローン人間とマッド・サイエンティストをドミニク・ピノンが演じますが、ひとりでも怖い？ピノンが同時に何人も出てくるのですからたまりません。この人はジャン＝ピエール・ジュネの常連です。蚤のサーカス団長は『デリカテッセン』の肉屋の主人です。

　

ノミのサーカス団長　　　　　　　　　　　　　　　　　ノミ

　ロン・パールマンがでていますが、このキャスティングも監督好みなんでしょう、『エイリアン4』でもドミニク・ピノンとコンビを組んでいます。

　で、お勧めかというと、『デリカテッセン』が面白かった方にはお勧め必見です。ジャン＝ピエール・ジュネの世界がパワーアップされています。

『デリカテッセン』（1991年）

『ロスト・チルドレン』（1995年）

『エイリアン4』（1997年）

『アメリ』（2001年）

『ロング・エンゲージメント』（2004年）

『エイリアン4』は別にしても、だんだん分かりやすくなってますね。

監督：ジャン＝ピエール・ジュネ、マルク・キャロ

出演：

ロン・パールマン

ジュディット・ヴィッテ

ドミニク・ピノン

ジャン＝クロード・ドレフュス

ダニエル・エミルフォルク