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映画 怒りの葡萄(1940米) [日記(2010)]

怒りの葡萄 [DVD]  『怒りの葡萄』は、1929年に始まる世界恐慌とそれに続く干ばつによって土地を追われた、トム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)一家の放浪の物語です。ストーリーは、オクラホマを後にカリフォルニアを目指すロード・ムービーの前半とカリフォルニアでの季節労働者の生態を描く後半の二部構成になっています。

 冒頭で、トラクターが農民の家を破壊するシーンがありますが、これも資本と機械化という搾取被搾取を象徴しているのでしょう。不景気と自然災害で、小作農のジョード一家はオクラホマを去ることになります。ボロ車に家財道具一式を積み込み、各地でキャンプをしながらルート66を西に向かう難民となります。途中で祖父母が死に路傍に埋められます。元説教師ケーシーの弔いの言葉は彼らのおかれた運命を象徴しています。

生ける者は皆 聖なり
死んだもののために 祈ろうとは思わない
導きが必要なのは 生きている人間だ

 カリフォルニアの大地を前にして、ジョードの父親が『乳と密の流れる土地』だと叫ぶシーンがあります。『乳と密の流れる土地』とは聖書で云うカナンです。神に命じられ、モーゼがイスラエル人を率いて目指した『約束の地』のことです。
 有名な話しですが、一家を率いてカリフォルニアを目指すトム・ジョードは『出エジプト記』のモーゼです。『怒りの葡萄』というタイトルも聖書の言葉らしいですが、葡萄→葡萄酒→最後の晩餐→血というイメージも湧きます。
 聖書が下敷きとなっているとするなら、カリフォルニアの農園で季節労働者のストを指導し、農園の雇った用心棒に殺される元説教師のケーシーも、人間の罪を背負って死んだイエスとイメージが重なりそうです。

 カリフォルニアに着いてもジョード一家の苦難は続きます。ひとつは地元民と警察による迫害です。キャンプで発砲事件が起き難民の女性が撃たれ、止めに入ったケーシーは逮捕されます。また、難民の大量流入により賃金相場は下がり、1日働いても暮らしてゆけない状況となります。賃金の下落を止めるためにストライキを組織するケーシーは、農園の雇ったスト破りの用心棒に殺され、居合わせたトムもまた殺人を犯してしまいます。
 オクラホマからカリフォルニアに来て、ジョード一家にも希望が見えかかりますが、トムは家族に災いが降りかかること恐れ逃亡の旅に出て幕となります。

 ストーリーの組み立てや登場人物のセリフを聞いていると、完全な社会派ドラマです。
ラストの、トムと母親の別れのシーンです、

(母親)
お前とはもう会えないのかい?
(トム)
一人の魂は 大きな魂の一部なんだ
その魂は万人のものだ だから
おれは暗闇の中にもいるってことさ
母さんが目を向ければね

飢えた人が騒ぐときもそこにいる
警官が おれの仲間を殴っているときも
仲間が怒りで叫ぶときも
腹をすかせた子供が食事を見て喜ぶときも
人が自分で育てた作物を食い 自分で立てた家に住むときも
おれはそこにいる

これは、東洋的に言えば、あらゆるものに神は宿るということです。虐げられたトムこそもっとも神の側にいると云うことなのでしょうか。

PDVD_002.jpg PDVD_001.jpg
ヘンリー・フォンダ&ジェーン・ダーウェル 

 128分のモノクロ、フィルムが古いのか画質が悪く目がチカチカしましたが、重厚な作りに感動しました。 モノクロの画像は1930年の米国をリアルに表現しているようで、逆に良かったかもしれません。

原作を読んで深く感銘したフォンダは、どうしてもトム・ジョード役をやりたいと熱望した
(wikipedeia)

というヘンリー・フォンダもよかったし、母親を演じたジェーン・ダーウェルは特に素晴らしかったです。ついでに、トムに影響を与える元説教師ケーシーを演じたジョン・キャラダインはキース・キャラダインのお父さん。

監督:ジョン・フォード 
出演:ヘンリー・フォンダ ジェーン・ダーウェル ジョン・キャラダイン 

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