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映画 道(1954伊) [日記(2011)]

道 [DVD]
 巨匠、名作と言うのには弱いです。(にわか)映画ファンなら見ていないと話にもなりません、フェリーニの『道』です。
 1954年制作のモノクロ。描くのは、バイクの後に『馬車』を引っ張ってイタリヤ全土を旅する大道芸人の世界ですから、地味!と言う他はありません。
 この旅の芸人ザンパノを演じるのがアンソニー・クイン。肺を膨らませて胸に巻いた鎖を切るというワンパターンな芸。こんな芸を街々の辻で演じて旅を重ねる芸人です。
 ザンパノの助手を務めるのが少し知恵遅れ(人並みではない、と母親が言っている)ですが誠実で素直なジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)。ジェルソミーナは『口減らし』のため1万リラでザンパノに売られたのです。売られるとは、芸人としてザンパノの助手を務めるだけではなく、彼の情婦としても役目も負わされるということです。

 映画はザンパノとジェルソミーナの旅を淡々と描きます。キリスト教の祭りに出会い、サーカスの一団に加わり、農家の結婚式に招かれ、修道院に一夜の宿を求めるなど、イタリヤの人と自然を背景にふたりが描かれます。
 粗暴で好色なザンパノのもとから逃げ出したいと考えるジェルソミーナですが、いつしかザンパノを支えるのは自分しかいないと思う様になります。サーカス団長との面談シーンでコーヒーを勧められます、また修道院で食事のお代わりを勧められるシーンがあります。いずれもジェルソミーナが形通り断り、ザンパノが『頂け』と促しますが、微笑ましいものがあります。ともに暮らす間に何時しか夫唱婦随の様な関係になったわけです。

 そしてふたりに運命的な別離が訪れます。ザンパノは殺人を犯し、それを目撃したジェルソミーナは精神に異常を来たし、ザンパノはジェルソミーナを捨てます。
 数年後、ザンパノはジェルソミーナが吹いていたトランペットのメロディーを耳にし、ジェルソミーナの行方を尋ねます。帰ってきた答えは彼女の死でした。

 とまぁあらすじを書いても『何処が名作なんだ?』という問いの答えにはなっていません。名作かどうかは別にして、戦争の荒廃が未だ残るイタリアの街と自然と人々の間をさまよう、ジェルソミーナの天使の様な姿は胸を打ちます。狂ったジェルソミーナを置き去りにしたザンパノですが、ジェルソミーナの死を聞いて泣き崩れる姿は涙をさそいます。
 フェリーニは、ザンパノとジェルソミーナに託して敗戦後のイタリアの人々の罪と悲しみを封じ込めたのです。人は多かれ少なかれザンパノとジェルソミーナであると。

 ともかくもジュリエッタ・マシーナです。美人ではありませんが、小柄で目のくりくりしたオカッパ頭のこの人の演技に目は釘付けとなります。
 アンソニー・クインは、『アラビアのロレンス』で金のためにアカバを攻めるアクの強い族長を演じましたが悪役が似合います。 

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監督:フェデリコ・フェリーニ
音楽:ニーノ・ロータ
出演:アンソニー・クイン ジュリエッタ・マシーナ

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