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映画 ミッシング (1982米) [日記(2011)]

ミッシング [DVD] 同じタイトルの2003年の映画があるようですが、こちらは1982年のコスタ=ガヴラス監督の『ミッシング』です。イヴ・モンタン主演の『戒厳令』とともに政治的メッセージ性の強い映画で、いずれも軍事政権下の国で起きたCIAからみのアメリカの国家犯罪を扱っています。
 1973年チリの社会主義政権、
アジェンデ政権が軍事クーデターによって倒されます。このクーデターの最中に行方不明となったアメリカ人の青年を捜索する妻と父親の物語です。

 行方不明となる青年はチャールズ(
ジョン・シェア)。彼は(父親曰く)小説家の卵で、チリの首都サンティアゴで子ども向けアニメの製作か何かに関わっています。
 チャールズが友人とリゾート地に遊びに行きクーデターが勃発します。そのリゾート地で自称海軍の協力者(次はコロンビアに行くか言ってます→バレバレのCIA)、米軍の高官、大使館駐在武官がセットで会合を開いているらしい現場に出くわします。この後、チャールズはチリ軍によって拉致され行方不明となります。

 戒厳令が敷かれ、街の角々では戦車の砲塔が市民を狙い、遠くで銃声の聞こえるシーンは恐ろしいです。夜間外出禁止令のなか、自宅に戻れなかったチャールズの妻が街を逃げまどうシーンは緊迫感があります。クーデターによって権力の掌握が最優先の国家権力にとって、市民の生命など羽毛の如く軽いという恐怖、軍隊が自国民に銃口を向ける恐怖、これが『ミッシング』の一貫した主題です。

 チャールズの行方を求めて、父親エド(
ジャック・レモン)と妻ベス(シシー・スペイセク)はサンディアゴのアメリカ大使館を訪ね協力を要請します。大使館の調査結果は、クーデター軍はチャールズを拘束していない、チャールズは自ら姿を隠したのではないかというをものです。調査に不満をもったエドとベスは、自ら調査を始めます。国家利益を優先する大使館は、CIAのクーデター関与を知ったチャールズを密殺し、口をつぐんだというわけです。

 ウォール街の金融ビジネスとその成功を絶対の善とする保守的なエドは、理想主義の息子とその妻ベスに対して批判的で、我が子の生死が危ぶまれるこの期に及んでもベスト諍う始末。病院から死体置き場までエドはベスはチャーリーを探し廻りますが、この困難な捜索によってふたりの隔たりが徐々にちぢまり、南米の異国でアニメーションを作成しようというチャーリーを理解するようになります。
 見どころは息子の安否を尋ねて異国をさすらう頑固親爺のジャック・レモンでしょう。自分の理想とかけ離れた不肖の息子とその嫁を最後は受け入れ、家族の共同の敵=アメリカ国家と対決しようという一途さです。

 唐突ですが、このエドを、9.11のテロ指導者を異国まで追い求め報復するアメリカという国家と重ねてしまいます。たぶん、エドとビンラディンに報復したアメリカという国家の根は同じではないかと考思います。
 映画『ミッシング』が優れているのは、チリの軍事クーデターの後ろにCIAがいたという告発とともに、このエドというアメリカ人の類型化ではないでしょうか。自国の都合で他国の政権をひっくり返す国家も、家族のために自国に闘いを挑むエドも、ともに『アメリカ』なのだというわけです。但しコスタ=ガヴラスはギリシア人で、意識してエドをアメリカに重ねたのかどうかは?です。むしろ、国家の犯罪の告発でしょうが、裏を読みたくなるほどによくできています。

監督:コスタ=ガヴラス
出演:ジャック・レモン シシー・スペイセク

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