映画 異人たちとの夏(1988日) [日記(2011)]
NHK・BSの「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本 家族編」という長い名前のシリーズの1作で、解説の山本晋也とアナウンサーが「これを見てお墓参りをした知人がいる」とか「日本風ファンタジーだ」とか持ち上げるので、期待して見ました。
一言で言えば「納涼お盆ホラー」です。TVドラマのシナリオライターの原田が、亡くなった父母と出会うと云うのですから、お盆でホラー。
原田(風間杜夫)は、ふとしたキッカケで12歳まで住んだ浅草を訪ね、演芸場に入ります。そこで原田は亡くなった父親(片岡鶴太郎)と再会しますが、舞台の芸人にヤジを飛ばす男を見かけ、それが父親だったという、およそホラーとはかけ離れた「幽霊の登場」です。
原田は40歳、父親は原田が12歳の時に交通事故で亡くなっていますから、亡くなった時の年齢30代半ばの姿で現れます。「ウチに来るか?」と誘われて行った浅草の路地の奥のアパートには、これも母親(秋吉久美子)が亡くなった時の若い姿のままかいがいしく父親の世話をやき「よく来たね」と原田を歓迎します。1960年代の東京の下町・浅草は、亡くなった人がお盆に帰ってくるには相応し舞台で、何の違和感もありません。
原田は妻と離婚して一人暮らしを始めたばかり。おまけに、仕事仲間の永島敏行が離婚した元妻と結ばれるという落ち込んだ情況で、亡くなった父母と出会うわけです。
「家族」という視点で見ると、「家族」のつながりが希薄となった現代に、家庭を築けなかった男と亡くなった父母を再会させて「家族」を再確認させようと云うことの様です。
あの世に帰るという両親と老舗の店ですき焼きを食べるシーンは、この映画のクライマックスですね。大林監督が「ここで泣かせる」とシナリオに書き入れた?通りに、観客はこのシーンで泣くこととなります(ある意味「お約束」)。
泣き父母と再会する物語、原田と恋愛関係に陥る桂(名取裕子)の存在など、日本の「怪談(kwaidan)」の伝統的な手法に則った話しです。桂のストーリーは、分からなくもないのですが、最後のホラーだけは余分じゃないでしょうか。
現在見ると荒さが目立ちますが、ノスタルジックな映像と片岡鶴太郎、秋吉久美子の演技が光ります。1960年代には、あんな風景があってあんな人たちがいたんだなと、懐かしく見ることができます。オジサンの「納涼お盆ホラー」としては、お薦めの一本です。
監督:大林宣彦
出演:風間杜夫 片岡鶴太郎 秋吉久美子 名取裕子 永島敏行
先日、BSで放映されたのを録画してあります。
従って、文章は映画を見てから読みます(笑)
by m-kurata (2011-07-29 18:23)
ご覧になったら感想をお聞かせ下さい。
by べっちゃん (2011-07-29 20:29)