映画 グラン・ブルー 完全版(1988仏伊) [日記(2011)]
グラン・ブルー(1988)→ニキータ(1990)→レオン(1994)に至るリュック・ベッソンの初期作品です。(才能の枯渇した?)ベッソンは、アクション映画のプロデュースとお子様ファンタジーに走っていますが、ニキータ、レオン、アンジェラの傑作?を知っているファンとしては、是非とも見たかった一本です。
ジャック(ジャン=マルク・バール)とエンゾ(ジャン・レノ)のプロのダイバーが、フリーダイビングの記録にしのぎを削るストリーを縦糸に、ジャックとジョアンナ(ロザンナ・アークエット)のラブ・ロマンスを横糸に織りなす海洋ロマンで、夏にぴったりの映画です。
これは、リュック・ベッソン版「冒険者たち(1967仏)」ですね。10代で「冒険者たち」を見て、何時かは俺も・・・と夢見た映画ではないでしょうか。アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカスが、ジャン=マルク・バール ジャン・レノ ロザンナ・アークエットに変り、最後に死ぬのがジョアンナ・シムカスではなくてジャン・レノなど細部は異なりますが、ジャン・レノが海底深く沈んでゆくシーンは「冒険者たち」です。「冒険者たち」は恋と青春の葬送でしたが、「グラン・ブルー」は友情と青春の葬送です。
いや、リュック・ベッソンとジャックは青春を葬送する積りは無いでしょう。葬るのは冒険途上で斃れたエンゾで、ジャックはなおも無償の行為、冒険に挑み続けようとします。夜の海に潜り、闇の向こう側に行こうとする行為がそれを象徴しています。
「グラン・ブルー」がジャックとエンゾの物語であるなら話は簡単なのですが、問題となるのはジョアンナの存在です。ジョアンナはNYの保険の調査員というどうしようもないほど現世的な職業に就いていますが、ジャックと知り合ってすべてを捨てて彼の元に押しかけます。こういう無鉄砲な世界はいいですね。しかし後やってくる世界、一時的な情熱が覚めてやってくる「日常」というヤツとどう向き合うかです。非日常という冒険の世界に生きるジャックは、子供を身ごもったジョアンナの世界とどう向き合うのか。
リュック・ベッソンは、ジャックを暗黒の世界に導くことで、逃げました。逃げたと言うより、リュック・ベッソンの夢を表現したんでしょうが、ジョアンナの存在は置いてけぼりです。まぁ、おなかの大きくなったジョアンナにイルカを配してみれば、ファミリー映画になっちゃいますが。
(日本人をカリカチュアライズした仕返しなんですが)後年、彼自身はジャックと反対にアクション映画のプロデュースとお子様ファンタジーに逃げた、と言いたいです。「アデル/ファラオと復活の秘薬 」などというとんでもない映画を見てしまいましたが、もう見ないぞアンタの映画は!
ジャン・レノ イルカに導かれて夜の梅に消えるジャック
監督:リュック・ベッソン
出演:ジャン=マルク・バール ジャン・レノ ロザンナ・アークエット
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