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映画 海の牙(1947仏) [日記(2011)]

海の牙 [DVD]
 持論「潜水艦映画に外れなし」、おまけに監督がルネ・クレマンですから見る前から期待が盛り上がります。ルネ・クレマン というと「禁じられた遊び」、「太陽がいっぱい」が有名ですが、チャールズ・ブロンソンの「雨の訪問者」、フェイ・ダナウェイの「パリは霧にぬれて」、ロバート・ライアン「狼は天使の匂い」などの米スターを起用したB級サスペンス?もなかなかのものです。
 
 「海の牙」は、Uボート(U-372)を舞台としたフランス映画という少し変わった建付けです。登場人物の国籍もドイツ、スェーデン、イタリア、フランス、それに国籍不明の北欧、作中の人物のセリフにあるように「ノアの箱船」。「海の牙」は、潜水艦という密室でこれらの人々が織りなす群像劇です。
 1945年4月19日、ノルウェーのオスロから一隻のUボートが南米に向けて出向します。通常の乗員の他に乗客として乗り組むのは

ハウザー将軍(ドイツ国防軍)
フォルスター(親衛隊長)
ウィリー・モリス(フォルスターの部下)
ガロージ(イタリアの実業家)
ヒルデ(ガロージの妻でハウザーの愛人、スェーデン)
クチュリエ(フランスの新聞社主)
エリクセン(学者、国籍不明の北欧人)
イングリッド(エリクセンの17歳になる娘)

 ベルリン陥落の直前ですから、ナチの亡命政権?を作る準備にハウザー将軍が南米に赴くという設定で、そのスタッフ+αとしてこうした多彩な人物がUボートに乗ることになったようです。
 ストーリーの方は、連合軍との戦闘による怪我でヒルデが昏睡状態となり、ヒルデのためにUボートは急遽フランス本土に上陸して医師を誘拐します。普通、医師は乗っていると思うのですが、まぁよしとしましょう。この誘拐された医師ギベールを語り部として「海の牙」は進行することとなります。
 
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Uボートの乗客達                  本作の狂言回し医師ギベール(右)
 
 ベルリン陥落と重なる1945年4月という設定がこの映画の総てでしょう。ナチの亡命政権工作、ベルリン陥落やヒトラー自殺の情報に動揺する乗客たち、敗けてもなお親衛隊長でありつづけるナチの亡霊、などなど1945年4月という情況が生み出すドラマがこの映画の主題です。

 第二次世界大戦終結のわずか2年後の制作ですから、Uボートも本物を使ったのではないかと思いますが、モノクロの荒れた映像はドキュメンタリーを見るようで、この映画に独特の迫力を与えています。そうしたリアリティに富む舞台で進行するドラマとしては、ちょっとお粗末です。
 イタリア人の実業家ガロージの妻がハウザー将軍の愛人であり、この三人がUボートの狭い空間に同居しているという設定自体は面白いのですが、この三人の心理的葛藤があるわけですが →浅い。潜水艦映画の定番とも言うべき対潜爆雷による攻撃と逃亡のスリルも、あるようで →無い。誘拐された医師ギベールの脱出劇があるのかと思うとこれも →無し。ベルリン陥落やヒトラー自殺を知る立場にあった通信士が死にますが、殺人と思いきや →これも自殺。
 などなど不満タラタラなわけですが、それは後に「眼下の的」「Uボート」「U571」などの潜水艦映画の名作を見ているからで、潜水艦映画の原点のようなもの、と言えば十分に言えます。
 ということで、取り立ててお薦めの映画ではありませんが、潜水艦映画ファンなら必見でしょう。個人的には満足!。
 
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監督:ルネ・クレマン
出演:マルセル・ダリオ ポール・ベルナール


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