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映画 砲艦サンパブロ(1966米) [日記(2011)]

砲艦サンパブロ [DVD]
 原題は、San Pabloかと思ったらSand Pebblesです。Sandは砂でPebblesは砂利ですから、どうも意味深なタイトルです。
 長いです、3時間を超えます。見終わって、この映画はどんなジャンルの映画なのか、考え込んでしまいました。歴史物かとも思うのですが、砲艦サンパブロが実在しているわけでもなく、歴史に名をとどめるような事件が起こるわけでもありません。アクションものかというと、戦闘場面はありますが、全体のなかではごくわずか。キャンディス・バーゲンが出ていますからロマンスもありますが、これもメインテーマではありません。歴史とアクションとロマンスを3時間にぶち込んで、スティーブ・マックイーンで割った映画、そうとしか云いようがありません。
 唯一の「こじつけ」は、架空の軍艦サンパブロを20世紀初頭の中国の僻地に登場させ、この世紀を通じて特徴的なアジアの途上国と列強の構図を描いて見せた、これではないかと思います。そう思って見ると、この3時間に及ぶ若干冗長な映画も、どことなく締まって見えます(褒めてるのかけなしてるのか?)。

 映画の中で南京事件(1927年のの南京事件)が触れられていますから、舞台は1926~7年の中国です。冒頭でも解説がありますが、この時代の中国は、辛亥革命で清朝が倒れて15年、国民党、共産党、軍閥が入り乱れて支配する混沌の地です。
 映画は上海からスタートし、マックィーン演じる機関兵ホールマンは砲艦サンパブロの停泊地へ船で行きます。この停泊地が長沙の近くだと言ってますから、長沙まで船で遡行できるんですねぇ、中国は広い!。奥地の保山まで宣教師を救出しにゆくという会話がありますが、まさか雲南省の保山ではないでしょう(洞庭湖に出て長江を遡ると言ってますから別の保山でしょう)。砲艦サンパブロは、米国人保護のためにこの長沙に停泊しています。南京事件(蒋介石によって引き起こされた事件の方)の混乱から宣教師を救出しに向かうというストーリーです。

 混迷の中国とそこに駐在する米国の軍隊(砲艦サンパブロ)の物語を、機関兵ホールマン(スティーブ・マックィーン)と宣教師の助手シャーリー(キャンディス・バーゲン)の淡いロマンスを軸に描きます。ストーリーは、

ポー・ハン(マコ岩松)の死
 ⇒米軍協力者として中国人のリンチにあい、ポーの頼みでホールマンが射殺します。ポーは、ポールマンが機関士の助手として教育し目を掛けていた青年です。
フレンチー(リチャード・アッテンボロー)とメイリー(マラヤット・アンドリアンヌ)の悲恋
 ⇒ ホールマンの同僚フレンチーは、娼館の酌婦メイリーを身請けして同棲します。フレンチーはサンパブロを脱走して病に倒れ、メイリーは中国人によって殺されます。
サンパブロ乗組員の反抗
 ⇒ホールマンはメイリー殺害の濡れ衣を着せられ、中国当局は身柄引き渡しを要求します。艦長(リチャード・クレンナ)はこれを拒否しますが、乗組員はホールマンの引き渡しを求め艦長に命令を拒否する事件が起きます。
河口を封鎖する義勇兵、国民党軍との戦闘
 ⇒南京事件が起き、上海への移動命令が出ます。艦長は自分とサンパブロの誇りのために、命令を無視して米国人宣教師の救出に向かいます。この戦闘で、図らずもシャーリーと親しい学生を殺してしまいます。

などの事件を経て
ホールマンは宣教師とシャーリー救出劇で命を落とし、「砲艦サンパブロ」の幕は閉じます。

 どう見ても、映画は、中国でカラ回りする米砲艦サンパブロの滑稽と悲劇です。国際政治のレベルはどうあれ、末端では列強のひとつである米国が中国と云うえたいの知れない「白髪三千丈」「中国四千年」の世界に絡め取られているという構図です。
 例えば、サンパブロには雑役夫として中国人が沢山乗り込んでいます。この中国人は食料と引き替えに船の雑用を引き受けてサンパブロに寄生する影の乗組員で、艦長、将校、兵がいるように彼等なりのヒエラルキーがあり、機関室も中国人のボスが牛耳っているというあり様。サンパブロ号は中国人に乗っ取られた観があります、中国4千年の知恵です(笑。

 砲艦San PabloはSand Pebblesであり、歴史の中で個人というのは砂粒やせいぜい砂利にしか過ぎない、そういうことなんでしょう。
PDVD_021.jpg PDVD_020.jpg
   Sand Pebbles                  San Pablo
 
 キャンディス・バーゲンは「ガンジー」(監督はリチャード・アッテンボロー)に出ていました。気品があってい綺麗です。メイリーを演じるマラヤット・アンドリアンヌですが、後に『エマニュエル夫人』で小説家に転じたんですねぇ。

監督:ロバート・ワイズ
出演:スティーブ・マックイーン リチャード・アッテンボロー リチャード・クレンナ キャンディス・バーゲン マラヤット・アンドリアンヌ マコ岩松

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コメント 4

ktm

長いこの映画の中で
ベトナムが泥沼化する時代背景とともに、
マックィーンが
「ミシシッピに中国の軍艦が浮かんでいたらたまらないよな」
とつぶやくところが妙に記憶に残っています。
この映画の存在価値はそこに尽きると思っています。

by ktm (2011-12-19 23:45) 

べっちゃん

ベトナム戦争が背景にあると私も思います。
マックィーンがそんなことつぶやいてましたか、見落としてました。今度確認します。
by べっちゃん (2011-12-20 09:22) 

ktm

この映画を見たのはずいぶんと昔の事なので、
もしかしたら記憶違いかもしれません。
たしかそのような事を言っていた気がします。

キャンディス・バーゲンは「魚が出てきた日」を良く憶えています。
人類は原子の火を手に入れましたが、それに振り回されているように感じられます。 やはり原子の火は手に入れてはいけないものだったのではないでしょうか。

by ktm (2011-12-20 16:27) 

べっちゃん

この映画の文脈から云うとアリですね。
「魚が出てきた日」は昔TVで見たことがあります。古い映画にもいい映画がたくさんあるので、こつこつ見てゆきます。
by べっちゃん (2011-12-20 20:23) 

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