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映画 冒険者たち(1967仏) [日記(2012)]

冒険者たち [DVD]
  先日「太陽がいっぱい」を見て古い映画ですが意外に面白かったので、「冒険者たち」を見てみました。
 複葉機にカメラを積んで凱旋門を通り抜けるという仕事を請負い、飛行士のライセンスを取り上げられたパイロットのマヌー(アラン・ドロン)。レーシングカーのエンジン開発に取り組み、車は炎上命からがら脱出したローラン( リノ・ヴァンチュラ)。貯金をはたいて個展を開くが、新聞に酷評されて落ち込む彫刻家のレティシア(ジョアンナ・シムカス)。夢敗れた三人が新たな夢「宝探し」に挑戦すると云う物語です。
 コンゴ動乱で行方不明となった財宝を探しにアフリカへ旅立ちます。何時の時代にも夢を見るのは若者の特権で、これだけでもうキラキラと輝くような青春が匂い立ちます。オイ、そんなにウマクゆくものか!と思うんですが....。確かにウマクゆきません。ところがですね、港で怪しいフランス人(セルジュ・レジエニ)と出会います。このフランス人は巨額の財宝を積んだ飛行機の墜落場所を知っているというもので、この墜落した飛行機のパイロットだ云うのです。最初の宝探しが失敗したと思ったら次が控えていました(笑。

 このパイロットの案内で三人は財宝を発見し、一人あたり50億円?の金貨とダイヤモンドが配分されます。この財宝も、動乱のコンゴから脱出したヨーロッパ人に財産で、この逃亡を助けた傭兵か何かが絡み、財宝の発見は連中の知るところとなります。この映画のターニング・ポイントです。

 ここまでは、マヌー、ローラン、レティシアの奇妙な三角関係と潰えた夢が主題ですが、この三角関係ですが、ちょっと常識では推し量れません。男女の関係は対であり排他的なものの筈ですが、この三人の立ち位置は等距離という設定です。財宝が発見され夢が夢で無くなった時点で、この三角関係は崩れます。レティシアはマヌーの誘いを断って、ローランと暮らす決意をします。そればかりか、財宝の発見を嗅ぎつけた傭兵の襲撃を受け、レティシアは命を落とし、三角関係は終焉を迎えます。
 マヌーとローランはレティシアに潜水服を着せて海底に沈めますが、この鎮魂の儀式は映画史上最も美しい鎮魂ではないかと思います。
 いやぁよかったヨカッタ...と終わらず、ここから「伝統」のフランス映画が始まります。「現金に手をだすな」の伝統です。マヌーとローランはレティシアの50億円を持って彼女の故郷を訪ね、そこでレティシアが住みたがっていた海に浮かぶ要塞を発見します...。

 ローラン、マヌー、レティシアの奇妙な三角関係は、「明日に向かって撃て(1969)」で踏襲されブッチ、サンダンス、エッタになったと云うのです。「明日に向かって撃て」の三人も不思議な関係だと思っていたのですが、そう言えばこのふたつの映画はどことなく似ていなくもないです。

 【冒険者たち】                【明日に向かって撃て】
ローラン(リノ・ヴァンチュラ)        → ブッチ(ポール・ニューマン)
マヌー(アラン・ドロン)          → サンダンス(ロバート・レッドフォード)
レティシア(ジョアンナ・シムカス)  → エッタ(キャサリン・ロス)

男性の方はちょっとトウのたった中年と青年のコンビで女性の方はうら若き女性、このトリオです。
「冒険者たち」では、マヌーがレティシアにラブコールを送りレティシアはローランを選択するという構図の中で、若いレティシアとマヌーが命を落とし中年のロ-ランが生き残ります。「明日に向かって撃て」の方では、エッタはサンダンスの恋人です。三人が出会ってからは、サンダンスと切れたわけでもないのですがブッチとサンダンスは、銀行強盗の果てにボリビアに逃れ警察に追い詰められて死にます。「明日に向かって撃て」は原題通りブッチとサンダンスの物語で、「冒険者たち」もローランとマヌーの物語です。じゃぁレティシアとエッタは何なんだというわけですが、男同士が夢を共有する触媒の様なものだと思います。ローランとマヌーふたりだけでは、(たぶん自我が衝突して)共に冒険の夢を追いかけることが出来ないのですが、レティシアという存在に十分の魂の一部を預けることによってふたりは共存できるわけです。レティシアはローランとマヌーふたりの共同幻想と云うこともできます。

 そして、若いレティシアとマヌーが死に、中年のローランが生き残ります。愛でられし若者が神に召され、ローランは潰えた夢を背負って生き続ける運命にあります。若くはないということは、そういうことなのです。

 レーシングカーに夢を託して破れ、そしてまたレティシアという夢が潰えたローランを演じるリノ・ヴァンチュラがいいです。「影の軍隊」という第二次大戦下のレジスタンスを扱った映画で、ここでも渋いレジスタンスのリーダーを演じています。こっちもお薦めです。

監督:ロベール・アンリコ
出演:アラン・ドロン リノ・ヴァンチュラ ジョアンナ・シムカス セルジュ・レジエニ

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コメント 2

ktm

これも懐かしい映画ですね。

by ktm (2012-06-03 20:05) 

べっちゃん

フランス映画はひと味違います。
by べっちゃん (2012-06-03 20:24) 

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