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BSシネマ 独立愚連隊(1959日) [日記(2012)]

独立愚連隊 [DVD]
 特異な風貌から、和製リチャード・ウィドマーク、和製チャールズ・ブロンソンと言われた佐藤允の主演映画です。「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本 喜劇編」の1編で、「肉弾」「吶喊」の岡本喜八の喜劇というのも見ものです。

 「愚連隊」というんですから、「疵」の花形敬の様な戦後闇市を徘徊した暴力団の映画と思ったのですが、戦争映画でした。「愚」なる「連隊」なんですねぇ、言い換えればアホな連隊。
冒頭の字幕で
 大東亜戦争末期 北支戦線 山岳地帯
とありますから、太平洋戦争末期の中国北部が舞台です。

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  佐藤允                      雪村いづみ
 
 その地に駐屯する大隊に従軍記者佐藤允が現れます。馬に乗って拳銃それもリボルバーをぶら下げていますから、新聞記者と云うより西部劇のガンマンです。この従軍記者は取材で最前線の守備隊に赴く途上にこの大隊に立ち寄った様で、大隊の支隊が最前線の守備隊というわけです。
 この大隊というのが如何にも思わせぶりで、大隊長は精神分裂気味であらぬことを口走り、副官(中丸忠雄)は捕虜を標的に拳銃の練習するような部隊。副官の部下にあの南 道郎が出てきますから、これはもう決まりです。何が決まりかと云うと、ちょっとおかしい大隊長を棚上げして、副官と班長が大隊をいいように切り回しているという構図ですね。この南 道郎さん、「人間の条件」にも出ていますが日本陸軍の内務班で悪役の班長やらせれば右に出る人はいません。おまけにと言っては失礼ですが、この精神分裂気味の大隊長が三船敏郎。世界のミフネと呼ばれるのは後のことですが、「羅生門(1950)」「七人の侍(1954)」「隠し砦の三悪人(1958)」と大スターの筈の三船がこの脇役を演じるんですね。鶴田浩二も怪しい日本語をあやつる馬賊として出ていますから、佐藤允はなかなか豪華な脇役を引き連れていることになります。
 
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 三船敏郎                      南 道郎
 
 大隊の移動とともに大隊にくっついて移動する「慰安所」「慰安婦」というものが登場します。先日も韓国人がこの慰安婦に関するモニュメントをアメリカの公園に建てて話題となりましたが、忘れた頃にマスコミに登場して日本帝国の恥部として喧伝されます。大隊専属の「売春宿」です。慰安婦のひとり(雪村いづみ)が従軍記者と懇意であることが明らかにされます。この慰安婦は元従軍看護師で患者の記者と親しくなり将来まで誓い合った仲。記者はある日突然病院から失踪して、看護師は捨てられた腹いせか何かで慰安婦に転職。ちょっと現実離れした設定です。慰安婦はこの荒木記者を大久保軍曹と呼んでいますから、こいつは何者なのだというミステリアスな部分が加わって映画はおもしろくなってきます。
 
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 戦場で博打                     軍旗の帰還(ボケてますスミマセン)
 
 三船敏郎の扱いを見ても分かりますが、山田洋次が「日本の名作100本 喜劇編」の1編として選んでいるように、この映画は喜劇です。悲惨な戦争も視点をちょっとずらせば乾いた笑いが生まれてきます。冒頭で副官が共産軍だか何かの捕虜を処刑する場面です。男を撃ち殺し、二人目の女の捕虜を従軍記者が助けますが、もう行っていいよと声をかけると、先ほど殺された男がムックリ起き上がって逃げていきます。何とも人喰った話しです。
 喜劇として成り立っているのは、何よりも佐藤允のキャラクタでしょう。何が起こっても、ニタッと笑って(ごまかして)肩透かし。慰安婦との関係も、将来を誓い合った恋人が売春婦に身を落としているわけですから、これはもう悲劇です。ところが、あっけらかんとしたもので、雪村いづみはよくも逃げやがったと言ってます。
 慰安婦のひとりは、稼げるだけ稼いで戦争が終わったら新宿で喫茶店をやるんだ、と言ってます。濁点抜きで喋っていますから日本人ではなさそう、にも関わらず新宿で喫茶店...何か変。
 従軍記者が取材に訪れる守備隊ですが、これも共産軍か国民軍か分かりませんが敵の真っ只中で孤塁を守っていますが、悲壮感は全くありません。見張りの兵隊が飯盒で骰子博打に興じる始末。極めつけは軍旗の帰還。当時、軍旗というのは兵士の命よりも重いという精神性を備えた日本軍の命で、これを守って堂々大隊に帰還するシーンがあります。軍旗の中心部分が無くなっていますが、これは軍隊に対する皮肉でしょうね。
 この映画の喜劇性の裏には、日本帝国軍兵士・岡本喜八郎のシニカルな眼差しが潜んでいます。

 こうした日本軍のカリカチュアの中で、和製リチャード・ウィドマークの佐藤允がニタッと笑って拳銃をぶっ放し、押し寄せる敵の中、硝煙の向こうに消えてゆきます。
 個人的には大変面白かったのですが、佐藤允、誰?という人にはお薦めできません。

監督:岡本喜八
出演:佐藤允 雪村いづみ 中谷一郎 中丸忠雄 鶴田浩二 三船敏郎

タグ:BSシネマ
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月夜のうずのしゅげ

愚連隊と言う言葉も、佐藤充さんも懐かしい!!♡
ともだちに顔つきがそっくりな魅力的な女の子がいたのでよく覚えています。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-07-12 08:46) 

べっちゃん

愚連隊と佐藤充をご存じということは、世代的には近いかも知れませんね。
by べっちゃん (2012-07-12 20:23) 

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