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映画 ザ・クリミナル 合衆国の陰謀(2008米) [日記(2012)]

ザ・クリミナル 合衆国の陰謀 [DVD]
 原題はNothing But the Truth。法廷で宣誓するアレです、「真実以外何ものも述べない」。邦題は「犯罪者、合衆国の陰謀」ですが、中身は「表現の自由」を巡る法廷ミステリーです。

 冒頭、大統領暗殺未遂事件が発生します。 米国はベネズエラ政府の陰謀だとして報復攻撃を始めます。女性記者レイチェル(ケイト・ベッキンセール)は、ベネズエラの関与を否定した文書をスクープし、その文書を書いたCIAのエージェント、エリカ・バン・ドーレン(ヴェラ・ファーミガ)の存在を暴露します。米政府はこの文書を握りつぶしたわけで、大スキャンダルに発展する可能性を秘めたスクープです。これが枕です。

 女性記者は、エリカ・バン・トーレンがCIAのエージェントであるという情報源を明らかにするようFBIから求められますが、これを拒否し収監されます。女性記者は罪を犯して収監されたわけではなく、情報源を明らかにしないことが国家の安全保障に重大な危機をもたらすということで収監され、特別検察官(マット・ディロン)の取り調べを受けます。この映画の怖いところは,収監すれば簡単に情報源を吐くだろうと考える検察官と、表現の自由で守られているからそのうち釈放されるだろうと考える新聞記者の収監が1年も続いたことです。その間に暴露されたCIAエージェントには、CIAを辞め離婚して娘の親権を失い挙句に右翼によって殺されるという悲劇が起きます。女性記者は夫に女性ができ離婚の危機が訪れ、一人息子の心が離れてゆくという犠牲を払います。それでも頑として情報源の供述を拒否する彼女の信念は立派と云う他はありません。女性記者は「こうなると分かっていたら記事は書かなかった」、とつぶやきますが、「報道の自由」、「表現の自由」という「主義」を貫くことと、それによって失うものの大きさですね。このふたつを天秤にかければ、どちらに傾くのか...。

 これだけでは面白く無いので、「ザ・クリミナル」にはもう一つの仕掛けが用意されています。やがて情報提供者が自ら名乗り出ます。この政府職員である提供者の取り調べで明らかになったのは、女性記者はエリカ・バン・ドーレンがCIAであることを予め知っており、この政府職員に確認しただけであり、さらに別の情報提供者がいるというものでした。女性記者に情報をもたらした者は誰か、意外な人物が浮かび上がってきます。

 この映画は実際にあった「プレイム事件」がモデルとなっています。詳しくはそっちを見ていただくとして、この「プレイム事件」を国家の犯罪の視点でえがいたものが「フェア・ゲーム」で、告発したジャーナリストの視点で描いたものが「ザ・クリミナル」です(だそうです)。
 沖縄返還に係る日米の密約を暴いた「西山事件」を連想します。密約そのものは政府がひていしてウヤムヤとなり、新聞記者とその情報源の外務省職員の関係だけが話題となり、密約の事実が明らかになったの30年後です。司法は政治の従属物であるということでしょうね。

 この映画は日本未公開ですが、テーマがテーマですから、公開してもヒットはしなかったでしょうね。で、お薦めかと言うと、アクションもラブストーリーもありませんが「ドラマ」としてはお薦めです。テーマの重み、意外なラスト、ケイト・ベッキンセール, アラン・アルダ, マット・ディロン, ヴェラ・ファーミガの熱演と、なかなかのものです。「 フェア・ゲーム 」も見てみたいです。

監督:ロッド・ルーリー
出演:ケイト・ベッキンセール, アラン・アルダ, マット・ディロン, ヴェラ・ファーミガ

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