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BSシネマ 旅情(1955英米) [日記(2012)]

旅情 [DVD]
 いつものように一言で言うと、ベネチアに観光に来た米国人のオールドミスが、イタリアの男性と恋に落ち休暇終了ととともにアメリカに戻ってゆく一夏の恋、それも行きずりの恋を描いた映画です。だから原題はSummertimeで、旅先で出会ったはかない恋だから「旅情」。
 ヒロインは、オハイオ州で秘書をしているジェーン(キャサリン・ヘプバーン)。休暇を取り貯金をはたいて長年の夢であったベネチアにやってきたようで、16mm(たぶん)カメラを片手にベネチアの風物を撮りまくっています。強いドルにものを言わせて世界を旅行するアメリカ人が多数いた時代の話です。ジェーンに普通のカメラではなく16mmムービーを持たせている辺りも、自立するアメリカ女性を強調したかったのでしょう。

 強い貨幣ドルにものを言わせ、片手に16mmムービーと勇ましいジェーンですが、ホテルに帰るとため息をついています。ホテルで知り合ったのは、退職後に世界旅行をして回っているアメリカ人夫婦と画家の恋人と仲睦まじい若いアメリカ人。ジェーンはというと、期待した旅先でのアヴァンチュールとは無縁で、それどころかストリート・チルドレンみたいな少年を案内役に名所旧跡めぐり。「旅情」と言うからには、ジェーンは素敵な男性と偶然に出会って恋に落ちるものと思っていましたが、ジェーン自らに旅行の目的はアヴァンチュール(恋の冒険)だと言われてみると、見ている方はシラケます。

 シラケますが、名所旧跡めぐりからホテルに帰り着き、今日も何事も無かった安堵を嘆くオールドミスの演技はうまいです。この時キャサリン・ヘプバーンの実年齢は48歳、(映画の中でジェーンの年齢云々はありませんから)48歳のオールドミスの期待に裏切られた嘆きは痛々しいです。そして予定通り王子様が登場します。ジェーンはサン・マルコ広場?のカフェで出会った男性レナート(ロッサノ・ブラッツ)と、偶然入った骨董店で再会します。

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サン・マルコ広場のレナート           レナートが見ていたジェーンの足首!
 
 ジェーンはレナートと恋に落ちるわけですが、このレナードは典型的なイタリア男性。女性を口説く(甘言を弄する)お手本みたいなものです、メモメモ(笑。念願かなったくせに、48歳の独身女性が見せる臆病と羞恥、期待ためらいの演技は、さすが4度のオスカーに輝くキャサリン・ヘプバーンです。この辺りでジェーンに対する偏見は消えてジェーン頑張れ!です。

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 デートの場に花売りが現れ、レナードはジェーンに好きな花を選ばせます。ジェーンが選んだのは、薔薇でもなく蘭でもなくクチナシの花。若かった頃デートでクチナシの花が欲しかったが、2ドルと高かったので相手の男性が買えなかった思い出をジェーンは語ります。このクチナシの花を運河に落とし、レナードが必死に取ろうとしますが取れません。
 クチナシの花はジェーンにとって成就しなかった恋の象徴なのでしょう。このシーンが伏線となってロマンチックなラストシーンが生きてきます。

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 休暇の終わりが来て「ふたりの関係には未来がない」と言ってジェーンはアメリカに帰ってゆきます。48歳のオールドミスの「一夏のアヴァンチュール」と言ってしまっては身も蓋もありませんが。

 ベネチアの名所がスクリーン一杯に展開され、それをバックにジェーンとレナートの恋が進行する辺りは「ローマの休日(1953)」を思い浮かべます。ローマをベネチアに置き換え、王女アンを48歳のアメリカの田舎のオールドミスに置き換えたのが「旅愁(1955)」。タイトルもRoman HolidayとSummertime(Holiday)。デヴィッド・リーンのたくらみの様な気もします。どちらが面白いかと云えば、「ローマの休日」の方がはるかに一般受けはします。
 監督は「戦場にかける橋(1957)」「アラビアのロレンス (1962)」「ドクトル・ジバゴ (1965)」のあのデヴィッド・リーン。大作を撮る巨匠だと思っていましたが、こんな佳作があるとは知りませんでした。キャサリン・ヘプバーンはハンフリー・ボガードと共演した「アフリカの女王」しか見ていませんが、この演技を見せられると他も見てみたいですね。

 でお薦めかと云うと、是非。
 
監督:デヴィッド・リーン
出演者:キャサリン・ヘプバーン ロッサノ・ブラッツィ

タグ:BSシネマ
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コメント 4

k_iga

当時のドルは強かったんでしょうね。
アバンチュールでもあり、自分の人生に足りないもの探しでもあり。
by k_iga (2012-07-20 22:51) 

ktm

この映画、昔のヨーロッパの雰囲気が良く出てますよね。

by ktm (2012-07-21 01:14) 

べっちゃん

k_igaさん、いつもコメントをありがとうございます。キャサリン・ヘップバーンのオールドミスはケレンミ無くてよかったです。他にもいろいろあるようなので見てみたいです。
by べっちゃん (2012-07-21 05:25) 

べっちゃん

ktmさんどうも。外国はアジアとアメリカしか行ったことがありません、しかも仕事。一度、観光でヨーロッパに行ってみたいですね、ナポリを見て死ねと言いますから。
by べっちゃん (2012-07-21 05:29) 

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