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BSシネマ 追想(1956米) [日記(2013)]

追想 [DVD]  “追想_映画”で検索すると1956年の米映画『追想』と、ロベール・アンリコ(『冒険者たち』の監督)の仏映画『追想(1975)』の2本がヒットします。1956年制作、イングリッド・バーグマンの『追想』の方です。原題はAnastasia。

 ロシア革命でニコライ2世とともに処刑された第4皇女アナスタシア(Anastasia)が、実は生きていたという物語です。ロシア革命の内戦を逃れ、多くの貴族、聖職者、資本家などが世界各地に亡命しています(例えば『上海の伯爵夫人』)。
 彼らの間では、アナタスシアが生きているという伝説が生まれ、実際アナタスシアを名乗る女性が何人も登場しています。そのもっとも有名な女性がアンナ・アンダーソンで、『追想』でアナタスシアに擬せられるイングリッド・バーグマン演じる記憶喪失の女性がアナと呼ばれ、皇太后マリア・フョードロヴナに会いにコペンハーゲンに行く際の偽造旅券はアンダーソンです。
 DNA鑑定によって、1994年にアンナ・アンダーソンは偽物であることが確認され、2009年にはアナスタシアの死亡も確認されています。
 
  皇帝暗殺から10年後の1928年パリ、ロシア正教会の復活祭の夜に、白系ロシア人のボーニン将軍(ユル・ブリンナー)は記憶喪失の娘アンナ(イングリッド・バーグマン )と出会います。アンナは一時アナスタシアを名乗り病院に入院していた経緯があり、ボーニンはイギリスの銀行に眠るニコライ2世の遺産1000万ポンドを手に入れるために、アンナをアナタスシアに仕立て上げます。パリの白系ロシア貴族がアンナをアナスタシアであると証言しイギリスの銀行に認めさせれば、1000万ポンドはボーニンの手に落ちます。というのが骨格で、ボーニンによるアンナ⇒アナスタシア化計画がスタートします。立ち振舞いから行儀作法、ダンスまで教え、優雅で威厳に満ちた“皇女アナスタシア”養成計画は、ちょっと『マイ・フェア・レディ』を連想します。とここまで来れば、ネタが割れます。ライザとヒギンズ教授ですねぇ。

 ボーニンは1000万ポンドが目当てですから、アンナがアナスタシアであろうが偽物であろうがどちらでもいい話です。一方、記憶喪失で自分が誰だか分からないアンナは、アナスタシアを騙ることに苦痛を覚え始めます。ところが、6人のロシア貴族他と対面し、かつての侍女と対面する辺りから失った記憶を序々に取り戻し、アンナは自分がアナスタシアであることを自覚し始めます。ボーニンの操り人形であったアンナが自分を取り戻し、威厳に満ちた皇女に変身する様は、なかなか見せます。イングリッド・バーグマンのこの変身がこの映画の最大の見せ場でしょう。

 ボーニンは、アナスタシアをパリの亡命ロシア貴族の社会にデビューさせ、彼らから本物である言質を取ろうとしますが、思うようにいきません。ボーニンは最後の手段として、アンナをアナスタシアの祖母(アレクサンドル3世皇后でニコライ2世の母)である皇太后マリア・フョードロヴナ(ヘレン・ヘイズ)に会わせ、アナスタシアであることを証言させようと企みます。
 皇太后は、デンマークの王女として生まれ、ロシアの皇帝アレクサンドル3世に嫁ぎます。長男のニコライ2世がロマノフ朝最後の皇帝であり、5人の孫は革命で処刑されるという悲劇の皇太后です。ロシア革命の勃発によってコペンハーゲンに逃れています。ボーニンは、この皇太后に孫アナスタシアをぶつけて本物であるお墨付きを得ようとします。アンナが偽物であれば、皇太后に易々と見破られますから、ボーニンはこの時点でアンナがアナスタシアであることを確信している様です。
 この皇太后マリア・フョードロヴナの登場によって映画がコロリと変わります。記憶喪失の女を皇女に仕立てて1000万ポンドを頂こうというピカレスク・ロマンが、ライザとヒギンズ教授の恋物語に変わるんです。

 今まで何人もの偽アナスタシアに会ってきた皇太后は、外見が似ているだけでは容易に信用しません。息子夫婦と孫を殺され国を追われた皇太后は、思い出だけあれば十分とアンナと会うことを拒否します。ところが、ボーニンの口車に乗せられ孫可愛さにアンナと会い、おばあちゃんと孫娘しか知らない話題となって「おばあちゃん!」「アナスタシア!」となるわけです。ついに、ボーニンの野望はここに実を結び、1000万ポンドを手にします...。とはなりません。アンナとボーニンの心の内を見抜いた皇太后は粋な計らいをします。
 で、手に手を取ってという下手な芝居はありません。もっとも、『マイ・フェ・レディ』のラスト「僕のスリッパは何処だ!」という洒落たセリフもありませんが。

 イングリッド・バーグマン、いいです。気品があります。ロマノフ家の皇女を演じて絵になる女優さん、ハリウッドのいます?

【ネタバレ映画館のイングリッド・バーグマン】
カサブランカ(1942米)
ガス燈(1944米)

監督:アナトール・リトヴァク
出演:ユル・ブリンナー イングリッド・バーグマン ヘレン・ヘイズ

タグ:BSシネマ
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